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(書評)ダークゾーン

著者:貴志祐介

ダークゾーンダークゾーン
(2011/02/11)
貴志祐介

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大学生であり、日本将棋連盟に所属するプロ棋士の卵・塚田は、闇の中で覚醒した。そこは、かつて行ったことのある軍艦島と思しき異世界。そして、17人の仲間とともに異形の存在の「駒」となり、戦いをすることに。7番勝負で4章を挙げた者が勝ち、というルールの中、赤の王将として、青の王将であり、同じプロ棋士の卵・奥本と戦うことになるのだが……
ということで、物語は、謎の異世界で、将棋の駒のような存在となって、敵と戦う、という形。主人公である塚田は、「王将」ということで他のメンバーを指揮(服従させる)ことが出来るという立場に立つ。
まぁ、正直なところ、最初はわけがわからない、という状況で始まる。ある程度、前情報を手に入れていても、いきなり「王将」だの「ゴーレム」だの「キュクロプス」だのといった言葉で連呼され、相手を殺す(ただし、1戦終わるごとにリセットされる)なんてことになっているのだから当然。主人公らも混乱するのだが、それと同じように、読者も混乱しながら戦いへと流れ込んでいく、という物語のつかみが上手いな、と感じた。そして、繰り返される戦いの中に挟まれるようにして、だんだんと現実での塚田が描かれていくことに……
こういうと何だけど、前半と後半では、かなり面白さの方向性が違うな、というのを思った。
前半というのは、何が何だかわからない中で、戦いに放り込まれた主人公が戦わざるを得なくなっていく、という本編部分の方に興味を惹かれたのに対して、後半は頭脳戦といえばそうなのだけど、ある程度、ルールが判明しているので前半ほどのインパクトはない。しかし、その代わりに、しばしば挿入される現実での塚田の生活と、ゲームに参加している人々のリンクだとか、そういうのが気になり、そちらをメインに読むことになった。その辺りの構成の仕方は流石の一言だろう。どっちかだけなら、絶対にダレてしまっていたはず。感想を書くにあたって、他の人の感想を読むと、その結末に賛否両論だったのだけど、私はこれもアリ(つまり賛)としたい。
ただ、気にならない箇所がないわけではない。その最大のものは、混乱があるとは言え、主人公・塚田があまりにルールの確認などを怠ること。解説役であるキュクロプスが「聞かれなければ答えない」としても、「その部分を聞いたら、関連質問としてこっちも聞いて置けよ」と思うところが多いのだ。早い段階で、キュクロプスがどういう存在なのかわかるだけに余計に。逆に言えば、ルールの後付で乗り切ったのかな? なんて思ったりもする。
もっとも、そういう風に文句を言いつつ、終盤まで駆け抜けさせられたのは事実。そういう意味で、一級の娯楽作品であるのは確か。

No.2908

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