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(書評)消失グラデーション

著者:長沢樹

消失グラデーション消失グラデーション
(2011/09/26)
長沢 樹

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男子バスケ部に所属する椎名。女子バスケ部のエース、網川緑に心惹かれながら、その思いを伝えられず、代わりに女子との関係を持つ日々。そして、その網川は、スタンドプレーにより部内で孤立し、リストカットを繰り返していた……。そんなある日、椎名は、網川が屋上から転落しているのを発見するが、何者かに首を絞められ、意識を失ってしまう。そして、気づいたとき、網川は忽然と姿を消していた……防犯カメラなどの監視を潜り抜けて……
第31回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作品。
なんていうか……すげー大技の作品ではある。
上に書いた内容紹介では、すぐに事件が起こるように書いたのだが、実際にその事件が起きるのは物語の3分の1ほどが消化したあと。それまでは、学園に現れる「ヒカルくん」など変質者や、女子バスケ部の中の確執。そういったものが丁寧に描かれていく。そこまでは、ミステリというよりも、まさしく青春小説としての趣を感じさせる。そして、事件は、謎に満ちており、椎名とクラスメイトの放送部員・樋口真由のやりとりで真相に迫っていくという展開も私好み。その意味で、ずっと楽しく読むことは出来た。
で、先に書いた大技なのだが、読んでいる中で様々な違和感を感じる部分があり、そういうものが次々とひっくり返っていく、というのは見事。さらに、そのことによって、メイントリックとも言えるものも、心理的な盲点をついて解決されたのも上手い。そういう点が高く評価されての横溝賞受賞なのだろう、というのは強く感じられた。
ただし、色々とご都合主義と感じられたり、はたまた、真相が明らかになることにより、登場人物の心境が「?」となることがしばしばあったのも事実。よく、こういう作品の評価に「人工的な人物配置」ということがあるのだが、本作についても、同じような問題を持った人間が偶然、沢山集まっていた、ということがあるのだろうか? と思えてしまう。それも、本作の場合、何重にも同じような問題・心理状態を持った人物が集まっていた、ということになるだけに余計に……。変質者(?)であるヒカルくんの扱いも、何かなぁ……という感じ。
仕掛けの使い方とか、そういうところについては物凄く良かったと思う。が、それと同時に、特に周囲の人物の描き方などが強引で、作品としての完成度を下げてしまったのではないか? という風に思わずにはいられなかった。

No.2911

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  •  何処に消えたのか?
  • 小説「消失グラデーション」を読みました。 著者は 長沢 樹 少女が屋上から落下、しかし 彼女は消えていて・・・ 学園ミステリー 殺人というより何処に行ったのか? という いわいる
  • 2012.10.19 (Fri) 22:59 | 笑う社会人の生活