(書評)あなたの本

著者:誉田哲也

あなたの本あなたの本
(2012/02/24)
誉田 哲也

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全7作を収録した短編集。これまでと違い、連作短編の形で、というのはあったが、完全に独立した短編集というのは初。
読んでいて、最初は、ホラーとか、SFとか、そういうテイストの作品も多くて驚いたのだが、考えてみれば著者のデビュー作は伝奇モノ、ホラーサスペンス大賞の『アクセス』も不可思議な世界が関わるホラーもの。最近の「武士道」シリーズとか、警察小説である姫川シリーズのイメージがどうしても強くなっている、ということに気づいた。
例えば、表題作。幼い頃、父の書斎で見つけた『あなたの本』という書籍。開いてみると、そこには、自分のそれまでの人生が綴られていた。そして、それは、その後も綴られている。今後がどうなるのか……気にはなるが、それは人生のカンニング。読むことなく、その本を閉じ、その後は忘れてしまう。そして、数年後、再び見つけ、その確認を行う……。
凄く生真面目な主人公。そして、本を読まずとも、ちゃんと人生はその本の通りに進んでいく。運命は決まっている、とは思っていても少しでも自分の力で開拓してきた日々。それが裏付けられてきた……と思ったのに、の、このオチ。ある意味、シンプルな物語なのだけど、それだけに印象に残る。
基本的には、こういうブラックな話が多いのだけど、中には、暖かい読後感の物語も。
例えば、『見守ることしかできなくて』。小学校のスケート教室で知り合った少女。彼女は、ジュニアスケート界では名の知られた選手だった。そんな彼女を、応援していて……。このオチには、確かにちょっとブラックなところもあるのだけど、それでも優しさにあふれている。逆に、『最後の町』も、SF的な設定がありつつもちょっとした救いを感じる一編。逆に、『帰省』などは、現実的なのだけど、ブラックこの上ないオチ。そう考えると、現実的かどうか、ってあまりオチに関係ないんだな、とわかる。
最後を締める『交番勤務の宇宙人』という、ギャグそのものの作品などもあるし、著者の色々な面を垣間見る作品集、といえるだろう。

No.2946

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