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(書評)ビューリフォー! 准教授久藤凪の美術と事件

著者:波乃歌

ビューリフォー!―准教授久藤凪の芸術と事件 (メディアワークス文庫)ビューリフォー!―准教授久藤凪の芸術と事件 (メディアワークス文庫)
(2012/07/25)
波乃 歌

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学生から人気の楽勝科目を受け持っている准教授・久藤凪。ところが、貧乏学生の田之中花は、まさかのF評価。このままでは、奨学金すらもらえない! そうしたら……。そんな花に、久藤は自分の奴隷(助手)になれば単位を、と持ちかける。文字通り、奴隷として罵詈雑言を浴びながらこき使われる中、花の周りには不思議な事件が起きて……
ということで、アート・ミステリーと内容紹介で書かれているように、美術品(絵画)を題材にした連作短編集。それぞれ、ブリューゲル『イカロスの墜落』、歌川国芳『みかけハこハゐがとんだいい人だ』、パブロ・ピカソ『泣く女』、ラファエル『子羊と聖家族』を用いている。
この中で好きなのは、1編目の『忘れられた少年』。
どうも体調が悪そうに見える内部進学生の矢野くん。彼がなぜそうなったのか、というと、それは彼の元に届いた1枚のカード。そこには、ブリューゲルの『イカロスの墜落』と死んだはずの同級生の名前が書かれていたから……
アート・ミステリーと銘打たれているように、作品そのものについて、そして、その解釈などが綴られ、しっかりと事件とも関連付けられている。墜落をし、今にも息絶えようとしているのに誰も気づかないという作中の様子。それがどう繋がるのか? さらに、その解釈について、作品が描かれた時代なども考察される。薀蓄、事件が上手く組み合わさっているなと思う。
……が、正直なところ、それ以外のエピソードが微妙。
というのは、他のエピソードは、事件そのものは絵画と無関係に起こり、無関係に久藤が真相を暴き、それぞれの絵画に関する逸話と併せて説明をするというだけだから。逸話そのものは興味深いものだけど、その解釈は結構、ありきたりだし、他の絵画などに纏わるものでもいえそうなものでその絵画である必然性が弱いのである。また、各エピソードでの謎解きも、一応の伏線はあるが、それで真相にたどり着けるか!! と感じるものがあった。
もっとも、そんな絵画を題材にした事件ばかり起こるのは変だし、むしろ、真相の説明などのたとえ話として逸話を使う、というほうが現実的なのだろうな、とも思う。そう考えれば、これで良いのかも知れない。……なんてことをふと思った。

No.2974

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