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(書評)日本溶解論 ジェネレーションZ研究 この国の若者たち

著者:三浦展

日本溶解論―ジェネレーションZ研究 この国の若者たち日本溶解論―ジェネレーションZ研究 この国の若者たち
(2008/03)
三浦 展スタンダード通信社

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1985年~92年生まれの世代。本書では、その世代を「Z世代」と呼ぶことにする。この世代は、バブル崩壊後の社会に物心がついた世代。この世代は、それまでの価値観とは全く違う価値観を持っている。伝統的な価値観が「溶解」してしまった世代である。
…というのが本書の論。この調査に関して言えば、後藤和智さんのブログで存在を知っていたのだが、書籍となっていたので手にとって見た次第。
私自身、三浦自身の著書に関しては批判的な感想を書くことが多い。ただ、どちらかと言うとそれは、調査手法ではなく、その分析であり、データから読み取れないものを断言している、などである(『下流社会 第2章』など参照のこと) だが、本書に関して言えば、それらもさることながら、それ以上に、調査手法そのものに問題を感じざるを得ない。
例えば、第2章、『キャバクラ嬢になりたい女子』。これは、複数回答可で「なりたい職業、してみたい職業は?」と質問したところ、「キャバクラ嬢、ホステス」に20%以上が「Yes」と答えたことに由来する。
しかし…この質問はどういう意味だろう? この質問は、「将来、現実的になることのできる、この職業で一生食べたい」という意味に取ることも可能である。「なることは難しいだろうが、万が一できたならそれで食べたい」と言う意味でも取れる。「その職業で食べる気など一切ないが、1日だけやってみたい職業」と取ることも出来るだろう。質問文に何よりも問題があるのである。また、この調査の中で現在、「専門学校生・短大生」の人は、「保育士」「看護士」などが多くマジメ、などと言っているが、当たり前である。しっかり目標を決めたからこそ、専門学校に行くのだから。「ミュージシャンになるために」看護士の専門学校に行く人が多かったら、そちらの方がおかしい。
180頁からは、調査概要が書かれているが、その冒頭に「マーケティング業界ではしばしばサンプリングの仕方が疑わせるようなものがある」というようなものがある。お前が言うな!
この調査では、PC、携帯でのものとのことだが、携帯調査は「女性用ポータルサイトにアクセスする人に対して行った。メールマガジンで宣伝をし、希望者に対して行った」とのこと。滅茶苦茶である。都道府県の人口比率と回答者のそれが近いので偏りがない、などと言っているが、それは何の保障にもなっていない。「全くの無作為なのに」って、メールマガジンで宣伝して希望者を、というのは、その時点で「無作為」とは言わないと思うのだが…。
無論、分析だって問題山積。例えば、第1章「がさつな女」。今回の調査と、三浦氏が05年に行った上の世代の調査結果を比較して、「がさつである」「面倒くさがり」などが多かったことで「男性化している。その理由はジェンダーフリー化だ」などと言うのだが、これはそもそも世代比較になっていない。こういう自己認識は年齢(とそれに伴うもの)によって変化することが多々あるためである。田舎の学校でトップクラスで「自分は頭が良い」と思っていた生徒が、都会の大学に来て「自分なんてまだまだだ」と言うようなことはよくある。それと同じことが十分に考えられるからである。
こんな感じで相変わらずなのだが、序文から三浦氏はなかなか凄い芸当をしてみせる。「この世代は、親を殺す例が多いように思う」と板橋の少年による両親殺害事件などの例をだし、警察の統計を示す。その名も「21世紀に増えている「親殺し」」。この統計はなんと!! 2000年~2006年のグラフ。…いや、増えた証拠になっていないし…(しかも、2000年より01、02、04年は少ない) しかも、この統計は、「被害者が父母、義父母」というものである。ということは、80代、90代の親を60代、70代の子供が介護疲れで殺した、などの例も含まれるのである(ちなみに、05年の少年によるものは17件である。これも「激増」と騒がれたのだが)。同じ頁に少年犯罪増加、というものもあるがこれも根拠は薄い(殺人などが増えていないことは一目瞭然であるのだが…)
相変わらずだな…という感じだろうか。

通算1198冊目

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