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(書評)東京は郊外から消えていく!

著者:三浦展

東京は郊外から消えていく!  首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)東京は郊外から消えていく! 首都圏高齢化・未婚化・空き家地図 (光文社新書)
(2012/08/17)
三浦 展

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かつて団塊世代が東京圏に集まり、郊外が作られた。しかし、人口減少社会へと転じる中、それらはゴーストタウン化してしまう。それを防ぐにはどうするのか?
ということらしい。
とりあえず、第1章、政府統計などから南関東地方の人口の状況などについてはそこまでおかしいとも思わないのだけど、その後、著者の独自調査に入ると「やっぱり著者の本だし……」と感じるところが多くなってしまう。
第2章で著者は、南関東(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、および茨城県の一部)を29のブロックに分け、プロだという「コンサルタント系」「マーケティング系」に行った調査により、この中で「発展する地域」「衰退する地域」を答えてもらう、ということをしている。
この時点で、いくつもの「?」が浮かんだ。まず、「コンサルタント系」「マーケティング系」って何者? いや、「コンサルタント系」は「ビジネスコンサルタント、シンクタンク系の人」というような説明はある。しかし、それって何? というものが出てくる。具体的に、どういう会社の人に聞いたの? 何人くらいに聞いたの? という風に。
彼らに、先に書いた地域のどれが、発展、衰退すると思うか? ときいて、「この地域が発展する」「この地域が衰退する」と展開していく。しかし、67頁の表によると、「発展」は41%が「衰退」は54%が「わからない」と回答している。つまり半分近くはわからない、と言っているわけである。回答者の比率が100%を軽く超えることから見ても、複数回答可となるわけで、となると、どの程度の意味で言っているのだろう? と思えてくる。そもそも「発展」「衰退」という言葉の解釈も難しいところだし、さらに、「何年後に」というスパンの問題もある。1年後、2年後みたいなものなら、ランドマークとなるものの完成とか、鉄道や高速などの開通などもわかるので予測が立てられる。しかし、20年後、30年後ではそれは無理である。そう考えると、ここでの回答を元にっていうのは無理が無いだろうか? しかも、著者はその「専門家」に理由は尋ねていない。こういう理由ではないか? と予想を言っているだけである。むしろ、専門家に聞くのなら、そこをメインにすべきではないか、と私は思うのだが(だって、理由を聞くことで彼らが挙げていないけど発展すると思われる地域などを発見するヒントがあるはずだ) ついでに、私が千葉県出身なので言うと、「房総」地域が千葉市より南の地域全体+東の銚子などの地域まで一まとめにされており、「震災による津波の影響では?」でまとめられるのに恐ろしく違和感を覚えた(そもそも、震災前から過疎地域だって多いし)
んでもって、その後も、著者は自身のアンケート(一般人対象を含む)で、この地域が発展する、この地域が……と展開していく。ただ、この場合も「?」がある。というのは、先に書いたように、このアンケートによる地域というのは、29の、いくつかの自治体の範囲をまとめた形で聞いているのである。つまり、この調査における「地域」とは「いくつかの市区町村」となる。ところが、著者の言葉の中には、より狭い範囲の話がしばしば登場するのである。例えば、東京23区の中の新宿という自治体がある。この調査で、「新宿区が発展する」なんて述べた場合、新宿区のどの地域が発展するのかはわからない。都庁のある西新宿方面かもしれない。歓楽街である歌舞伎町方面かも知れない。コリアンタウンと呼ばれる大久保地域かも知れない。学生街である高田馬場かも知れない。それほど広い範囲ではないが、それぞれで全くカラーの異なる地域になっているわけで、そういうものをごちゃ混ぜにされても……と思う(しかも、著者は、鉄道の路線単位で話を進めるのだから、余計にその範囲が広まってしまっているし、自治体の端など、実は別路線の圏内になっている人も含まれることがあまり考慮されていない)
さらに、いつも通り、質問文そのものがおかしい、というのもある。185頁の「最近の東京圏の動きに対する評価」というものを元に、著者は、都心は便利になったがつまらなくなった、という。しかし、選択肢を見ると、「つまらなくなった」と「便利になった」という評価の選択肢ばかり)、「面白くなった」とか、「不便になった」という選択肢がないのだ。そのような偏った選択肢しか用意せずに言われても……。
そんな感じで結論あり気だし、著者の出す案が、SOHOなどや、若者向けシェアハウスなんていう、著者が過去に題材にしたもの。SOHOなどで出来る仕事というのは、限りがあるし(それでも人口がいれば、そこに需要が生まれる、という考え方が無いとはいえないが)、シェアハウスがあるから若者が来る、ということはないと思うのだが……。なんか、掘り下げ不足、というか、そのあたりの浅さが著者らしい、と思う。
何か、それでも著者の書としては「まだ」マシなほうと思える。

No.2989

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