fc2ブログ

(書評)扉は今も閉ざされて

著者:シェヴィー・スティーヴンス
翻訳:小田川佳子

扉は今も閉ざされて (ハヤカワ・ミステリ文庫)扉は今も閉ざされて (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2011/11/25)
シェヴィー・スティーヴンス

商品詳細を見る


8月のある日、わたしは誘拐された。不動団業者として仕事も充実し始めた矢先、見知らぬ男に誘拐された私は、山小屋に監禁され、歪んだ愛情と暴力に晒される日々を送ることに。そして、そこから奇跡の生還を果たした……はずだったが……
著者のデビュー作で、かつ、処女作とのことなのだが、これは凄い。素直にそう思った。
物語は、主人公であるアニーが、「先生」と呼ぶ、カウンセラーだか、精神科医だか、そういう人物に対して、拉致・監禁をされてからの状況、そして、現在の状況を語る、という形で進行する。大雑把に言うと、前半は監禁され、そこでの日々についての告白。後半は、そこから生還をした後の、しかし、平穏な日々とは言いがたい中での様相が綴られる、というような構成。
その中で特に凄いのは、前半。
誘拐され、山中の山小屋に監禁されたアニー。そこから出ることは出来ず、しかも、誘拐犯は、アニーが「サイコ男」と呼ぶように、変質的な気質を持ち、時間も何もかもを支配する。そして、その男に犯されてしまうなどの屈辱までもを味わう。けれども……
この感想を書く前に、他の方の感想とかを見ていたら「ストックホルム症候群」というような言葉を目にしたのだけど、この作品の場合、単なるストックホルム症候群というよりは、全てを支配される中で「サイコ男が居なければ死んでしまう」というような危機感、どうにかして生き延びる、というような生存本能、さらに、ネタバレになるが、妊娠・出産ということを通しての母性本能というようなものが入り乱れての感情が生々しく描かれる。基本的に、犯人に対して愛情とか、そういうのを感じているわけではないのだけど、しかし、100%の憎しみではない、という微妙な状況が物凄くリアリティを感じさせた。そして、そこからの脱出の経緯もある意味で……
後半、その事件が思わぬ形で波紋を広げながらも、とても綺麗な結末を迎える、というのはちょっと出来すぎかな、とは思う。
ただ、矛盾点とか、そういうのがあるわけではないので、不満というわけではない。
前半の展開で、これでもか、と読者をひきつけて、しっかりと最後まで破綻なく纏め上げる。デビュー作、処女作でこれ、というのは、物凄い、というのを思わずにはいられなかった。

No.2999

にほんブログ村 本ブログへ




スポンサーサイト



COMMENT 0