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(書評)カラマーゾフの妹

著者:高野史緒

カラマーゾフの妹カラマーゾフの妹
(2012/08/02)
高野 史緒

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不可解な「父殺し」事件から13年。父殺しの犯人として逮捕された長男・ドミートリーは既になく、関係者もそれぞれの生活を築いていた。そのような中、特別捜査官として名を挙げてきた次男・イワンは、その事件の真相を求め、忌まわしき故郷へと戻る……
第58回江戸川乱歩賞受賞作。
著者の高野氏は、今回の乱歩賞以前に既にデビューを果たしており、実績も色々と持っている人物。既にデビュー後の人が、ここで受賞というのは、08年の受賞作家・翔田寛氏と同じパターンといえる。
で、内容は、というとタイトルからも予想がつくようにドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を題材としたもの。ドストエフスキ自身が「続編を書く」といいつつ、ついに実現できなかったそれを、作中の矛盾点や投げっぱなしだった部分などをヒントとして、新たな解釈を取り入れたミステリ作品にした、というもの。このようなパターンの作品としては、『贋作「坊ちゃん」殺人事件』(柳広司著)が頭に浮かんだ。
まぁ、『坊ちゃん』のときと同じように、本作でも原典を読んでおらず、粗筋などを見ながらの読書、という感じだったので、作中の細かな遊び心とか、そういうのはわからないところが多い。ただ、そういうのを含めて、選評に書かれた「乱歩賞としてふさわしいのか?」という議論が出るのは凄く理解できる作品。
とにかく、凄く大胆不敵な構成というのが何よりも言える。普通、ミステリ作品なら、舞台が紹介され、事件が起こり、その真相を求めて、と話が展開する。ところが、本作の場合、舞台紹介、事件は既に起きている。なので、そういうところは、筆者の簡単な説明という形で大幅に省くなどされている。ミステリなのに、事件描写などは簡単に。こんな方法もあるのか、という色々な意味での驚愕を覚えた。
そして、解釈の方も独特。作品は、『カラマーゾフの兄弟』から13年後、という設定なのだが、同時に、作品そのものが書かれたのが原典表時から130年後、という設定にされている。そのため、原典の時代にはまだ考えられていなかったような、まだ一般的でなかったような知識なども解釈に加わり、それらを含めての新解釈になっているのである。こうすることによって、原典の時代感とかを破壊しているんじゃないか? という心配も起こりつつ、しかし、そういう風にしてしまう発想こそが、SF作家として活動してきた著者ならではのアイデアなのだろうな、というのを思わずには居られない。
正直なところ、原典を読んでいない、という時点で、作品の全てを味わいつくすことは出来なかったと思う。むしろ、本書を読み、原典のあらすじを読み、色々なサイトの感想などを読み、その上で、著者の発想力とか、構成とか、そういうところを楽しんだ作品、といえるかもしれない。

No.3002

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