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(書評)シフォン・リボン・シフォン

著者:近藤史恵

シフォン・リボン・シフォンシフォン・リボン・シフォン
(2012/06/07)
近藤 史恵

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活気を喪いつつある地方都市・川巻。半数近くがシャッター通りになったその商店街にその店はオープンした。ランジェリーショップ「シフォン・リボン・シフォン」。そこを舞台とした連作短編集。
ランジェリーショップ……何というか……私のような人間には最も縁遠い店だと思う(笑) だって、基本、男が入るような店じゃないしねぇ……。考えてみれば、男性の下着の選択とかって、結構、楽だよな、とか、物語とは全く無関係な感想をまず持った。
で、物語は、基本的に連作短編の形なのだが、全4編中、前半2編がショップの外部の人間の物語で、後半2編が、ショップの経営者であるかなえの物語となる。
「ほのぼのとした小説集」と言うような紹介がされているのだが、そんな感じを一番受けるのは1編目。昔から、胸が大きく、そのことを「だらしない」などと親に言われてきた女性。しかも、母が病に倒れたことで就職も出来ず、それがさらに劣等感を抱く原因になっている。そんなときに、「シフォン・リボン・シフォン」に入って……
彼女の場合は、かなり極端だけど、でも、他人にはわからないようなちょっとしたことがコンプレックスになって、なんていうのは十分にあること。そして、それを解消し、自身を深めることで新たな一歩を踏み出せる。話としては重苦しいのだけど、その過程が優しく描かれていて、こういう作品なのか……とまず思う。
ところが、話を読み進めていくと、下着というもの、というよりも家族の問題。介護の問題。そういうところに話がスライドしていく展開。1編目だって、母の介護とか、そういうのがあるんだけど、2編目以降、より、家族というものの関係が強調される。
凄く中身のない言葉だけど、「家族の問題って厄介だよね」と思わず感じた。だって、親子だとかだと、そもそものところに教育する側、される側みたいな上下関係が存在しているし、外部の人間が入りづらいから密室状態になりやすい。身近だから遠慮なしの本音が出やすいし、だからって簡単に切り離すことも出来ない。特に介護とか、そういうところになると如実にそういうのが出る(私の祖母も、最期の数年間、寝たきりだったのだが、ヘルパーに対してと家族に対しての態度とかまったく違ったりした) でも、常にいがみ合っているわけではなく、本当に空気のように隣に居る瞬間があったりもする。そういう家族のあり方を鋭く抉ってくる感じがする。にも関わらず、ひたすら重くて読むスピードが落ちる、という風にならないバランス感覚は著者ならではだな、と思う。流石。何だかんだと言いながら、悪いことばかりでもない、と希望を感じる結末も良かった。
ただ。そういう風に展開するにつれ、だんだんと、「ランジェリーショップである必要性」が薄れてしまったような、というのも同時に感じた。かなえの話とかって、ランジェリーショップというのがきっかけのひとつではあるのだけど、それでなくても物語は成立していたような。まぁ、それは野暮か(笑)

No.3005

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  •  「シフォン・リボン・シフォン」近藤史恵
  • 下着が人の気持ちを変える? 弾ませる? 東京のファッションビルの一角でランジェリーショップを成功させた水橋かなえは、母の介護のため、活気をうしないつつある地方都市に戻ってきた。まだ30代の彼女は、通信販売で固定客を得ていたこともあって、この街でも店を開く。機能的な下着から自由でチャーミングなものまで、いろいろ勢ぞろい。さびれた商店街にできたこのちょっと気になるお店に、やがて人々は引き寄せられ...
  • 2013.12.20 (Fri) 13:30 | 粋な提案