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(書評)いじめで子どもが壊れる前に

著者:藤川大祐

いじめで子どもが壊れる前に (角川oneテーマ21)いじめで子どもが壊れる前に (角川oneテーマ21)
(2012/10/10)
藤川 大祐

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大津市の事件をはじめとして、いじめの問題がクローズアップされている。しかしながら、いじめそのものはどこででも起こり得ることで、「あった」「なかった」を確定することすら困難なもの。「確定」などをせずともにできることは沢山ある。いじめの構造、実態からどうすべきか、までを綴った書。
うーん……なんか、ふわふわとした議論というか……何というか……。主張していることが完全に間違っている、とは思わないし、良いと思うことも沢山ある。著者が参考文献としてあげている内藤朝雄氏や荻上チキ氏、森口朗氏らの書を踏まえている、と思われる箇所も色々と見つけられる。しかし、どうにも全体を通して「その通り」という感想が抱きにくい。
なんで、そういう風に感じたのか、というと、全体を通して論拠などが少なく、特に、いじめ対策などについて語った後半でそれを強く感じるため、「それもひとつの方法だけど、具体的にどうやるの?」とか、「本当にそうなの?」と思えるところが出てくる。やたらと「~かも知れません」「~することが考えられます」という文言が出てくる。
また、特に感じるのは、教師、保護者の個々人の素質の問題などが強く出てしまうところが多い、という点。
例えば、学校では「同じであれ」という「同質原理」が強くある。そういう場所では、それに支配されイジメが起こり、悪質化しやすい。これは、先に挙げた内藤朝雄氏の書などでも指摘されていることで、そうだろう、と思う。しかし、互いが異なることを前提とし、それをよしとする「異質原理」を機能させることで抑止になる。そして、そのためには、教師も保護者が対等に議論を出来るようにするディベートの素養を身につけること、という。
また、イジメによる(重大な)被害をなくすために、というので、適度なガス抜きを用意しつつ、子供の規範意識を高めるように導くことが大事。発達障害などはイジメの対象とされやすいので、配慮が必要。などなど、様々な提案がされている。
こういうのは無論、あれば良いことは間違いない。ただ、問題となるのは、それが教師、学校、保護者といった個人レベルの能力に掛ってしまう、ということである。特に、「被害をなくすため」のものは、である。長期的に見て、そういう能力を育てる環境を作ることは賛成であるが、即効性はないし、環境を整えたとしても能力が低い、とか、意識が低いという人間が出てくることは避けられない。そういう状況でも、最低限のことは守られる制度的な環境整備も必要ではないだろうか? その辺りがあまり語られていないのがちょっと残念。このあたりは、「実現性が低い」とは思いつつも、制度的整備の方向性を出している内藤朝雄氏の提案を評価したい。
まぁ、提案を否定する気はないのだが、何か色々と物足りないと感じた。

No.3006

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