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(書評)ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆

著者:三上延

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
(2012/06/21)
三上 延

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栞子さんの母についてのことはあったものの、ビブリア古書堂での日々を過ごす大輔。そんなある日、時々訪れる常連客が言った一言。「いい本が少ないな」 その言葉もあり、「市場」へ、急遽、向かうのだったが……(第一話)
タイトルで丸わかりのようにシリーズ第3作。
これまでも、本に纏わる人間関係とか、そういうのが描かれてきたのだけど、今回はタイトルに「絆」とあるように、特にそれをクローズアップした印象。特に、前巻で栞子と、その母の関係が出たことがあってか、親子関係というのが強調されている。
それがまず第一話。冒頭に書いたように、栞子と大輔が古書交換会(市場)へと赴く話。ところが、そこで出品していない古書を自分たちが出したことになっていて、しかも、栞子の母についてよく思っていない同業者から本を盗んだとまで言われてしまう。
出していない本は何なのか? 誰が本を盗んだのか? というのがメインの謎解きではあるものの、それ以上に、なぜか栞子の母が栞子の現状を知っているという不思議。さらに、同業者の人物の言葉や、栞子が過去にやった行為によって100%、栞子を信頼して良いのか? という疑惑が膨らんでいく様の方が印象に残る。やはり、このシリーズの最終的なところでは、栞子の母娘関係へと収束するのだな、というのが強く感じられるので。
で、第2話は、というと、第1巻で登場した「しのぶ」の母娘関係。過去のしがらみから、現在は絶縁状態の両者を、しのぶが探している本を探すというところから解きほぐしていく……となる。それだけならば、普通の「良い話」なのだけど、第1話などで出て来た栞子自身の母娘関係を重ねた場合、どうなのだろう? と感じられる。人間、他人のことは客観的に見ることが出来ても……というのは普通のことなのだけど、栞子の場合はどうなのだろう? とどうしても思う。
そして、第3話。こちらは、それら全ての要素が全て混じったような印象のエピソード。
亡くなった父が残した宮沢賢治の稀少本が盗まれた。犯人は、兄かその嫁に違いない。犯人を捜して欲しい、という依頼。かつて、栞子の母はこのような仕事をよく引き受けていた。そして、今、栞子も。真相を明らかにした後、どうするのか、というところは母への反発などもあって違うが、そこに至るまでの軌跡はそっくりな二人。しかも、事件そのものも、華族の中だからこそ生まれる反発や不信感というものが根底に存在している。栞子の母娘関係というのをクローズアップした今巻の象徴のようなエピソードのように感じるのである。
正直、今巻は、栞子の母娘関係というのばかりに目が行って、各編で扱われた作家、書籍に纏わる薀蓄がサッパリ頭に入っていない(笑) 物語を楽しんだ、という意味では間違いないのだけど、何か損している気もしないでもない。

No.3021

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