(書評)猫除け 古道具屋皆塵堂

著者:輪渡颯介

猫除け 古道具屋 皆塵堂猫除け 古道具屋 皆塵堂
(2012/04/26)
輪渡 颯介

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苦労を重ねた上に、騙されて田舎すら失った庄三郎。仕方なく江戸に出て、神社に寝泊りしていたある晩、女が藁人形に釘を打ち付けているのを目撃する。自分も……と思った庄三郎は、そのための道具を皆塵堂という古道具屋で買って……
皆塵堂シリーズ第2作の、多分、連作短編集。
前作の主人公・太一郎は、古道具についた怨霊とか、そういうものが「見える」性質だったわけだけど、今回はそういう自覚そのものがない庄三郎。時々、何かが「見える」ような気がする、というだけの存在。そして、そんな彼が、皆塵堂で藁人形などを買ったことで縁が出来、そこに居候するようになって……という形で物語が始まる。そして、潰れた鰻屋にあった掛け軸、亡霊が映るという鏡、大八車に釣り鈴、そして、猫の根付……と曰くつきの物を巡っての話が展開する。
正直なところ、このシリーズは前作で一応の決着がついた感があったので、続編、大丈夫かな? と思うところがあったのだけど、前作の後日談。そして、主人公そのものを前作の太一郎から変更してきたことで無理なく続けることに成功していた。と、同時に、前作を読んでいなくても、それほど問題ない形に仕上がっている。まぁ、相変らず、太一郎の扱いは酷いけど(笑)
前作もそうなのだけど、このシリーズというのは、「曰くつきの品」についてその曰くを取り除くとか、そういうことではなく、ただ、その存在を認めつつ、どうそれと付き合うか、自分がどう動くのか、というのに主眼が置かれているように思う。本作の中ではっきりと曰くを解決したのは子供の頭に見える釣り鈴くらいで、あとは、正体がわかっても放置とか、逆にそれを使って悪戯とか滅茶苦茶なやり方が多い。でも、それで良いのだと思う。
なぜなら、皆塵堂の面々の、そういうやり方というのは本作の主人公・庄三郎にはないものだから。元々、お人よしで、それ故に故郷を追われた身。そして、皆塵堂では主人の伊佐次に「もっと休めば良いのに」といわれるくらいに生真面目。だからこそ、追い詰められた。そんな彼が、伊佐次らを見ていれば、それだけでもっと気を抜いて良いんだ、と思えるはず。また、ある面、似た部分を持った太一郎とのやりとりで感じるところもあるはず。曰くに纏わるエピソードは悲しいものとかもあるのだけど、それぞれの人間像が明るいため、結果的に再生する庄三郎というのに説得力がある。過去が変わったわけでも何でもないけど、それでめげているだけじゃダメなんだ、とちゃんと思えるのだから。
この1冊でひとつの物語としては完結しているのだけど、また新たな主人公で(そうでなくても良いけど)、この面子の話を読ませて欲しいな。

No.3025

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