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(書評)ついてくるもの

著者:三津田信三

ついてくるもの (講談社ノベルス)ついてくるもの (講談社ノベルス)
(2012/09/06)
三津田 信三

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高校2年生の私が、学校への登校中に見かけた鮮やかな緋色。それは、廃屋の裏庭になぜか置かれた雛人形の雛壇だった。そこには、片目と片腕が失われた人形が並ぶ中、ひとつだけ無傷なものが……。「助けなきゃ!」と思わず、その無傷なものを持ち帰った私だったが……
という表題作をはじめとする全6編を収録した短編集。
著者の作品というのは、ホラー的な様相を取り入れながらも、実は論理的に解決されるミステリというパターンが多いのだが、ここに収録された作品は、完全に人外によるものが多い。ただし、何か話としては、都市伝説のようなものが多い。
例えば、1編目の『夢の家』は、パーティーで出会った女性がだんだんと豹変して……というもの。だんだんとストーカー化し、やがて、夢の中にまで現れる女。こういう話って、どこかで聞いたことがある気がするのだけど、定番ゆえの嫌らしさ、というのがある。また、『祝儀絵』、『ルームシェアの怪』とか、『裏の家の子供』とかも、そんな雰囲気を漂わせている。
冒頭に書いた表題作も、その意味では近いのだけど……ただ、ある一点で、というのではなく、様々な災いを呼んでいき、最終的にサイコホラー的な様相を示すのが怖い。
一方、分量的に最もある『八幡藪知らず』は、子供たちの冒険譚に、という話。
大阪の小学生が入ろうとする禁忌の森。決行は次の日曜日。しかし、それを決めた翌日から、奇怪な手紙が届く……。「奇怪な手紙」という要素以外におかしなことが起きているわけではない。けれども、昔、口減らしの子供を捨てていた森ではないのか? というような噂などがあり、どうにも嫌な予感だけが先立っていく。そして、それでも決行した先にあるのは……。ここでも、大きな出来事があるわけではないのだけど、ちょっとしたところで凶事が起きていった、という結末が嫌な余韻を残してやまなかった。
そんな中、異色なのが、最後に収録された『椅人の如き座るもの』。タイトルからも予想できるように、物語は、刀城言耶シリーズの一作。そして、事件は、人間そっくりな椅子を作る工房で人間が消失した、というもの。
正直、人間そっくりの形に作る椅子、というのを想像すると気持ち悪い、とは思う。ただ、それだけで、ミステリとしてのトリックは至極簡単でひっくり返しなども無い。そういう意味で、ごくごく普通のミステリなのである。それまで、人外の何か、を扱った作品が続いてきた中、シンプルな本格ミステリ。ここに入れる必要、あったのだろうか? と、ちょっと思った。

No.3048

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