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(書評)猫背の虎 動乱始末

著者:真保裕一

猫背の虎 動乱始末猫背の虎 動乱始末
(2012/04/05)
真保 裕一

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安政2年。江戸の町を大きな地震が襲う。崩れた家屋に、江戸を覆う火事。食料を求める人々……。混乱に覆われる中、新米の南町奉行所同心の大田虎之助は、臨時の見廻り役を仰せつかる……
著者の作品で、現代を舞台にしていない作品というと『覇王の番人』『天魔ゆく空』があるのだが、その2作とは全く趣の異なった作品となっている。というのは、その2作は、明智光秀、細川政元という人物を主人公に、その人生を描いた「歴史小説」であるのに対し、本作は安政の大地震という事件はあるものの、架空の人々を描いた捕物帖、「時代小説」と呼ぶべきものになっているため。物語の背景には、当時、起こりつつあった欧米による開国要求や安政の大獄前夜の混乱もあるのだが、そこが中心とはなっていない。
「仏の大龍」と呼ばれた亡き父のあとを継いだばかりの虎之助。体は大きいが、家では母や姉に頭が上がらず、普段は猫背気味に過ごす。けれども、人々の話に素直に耳を傾け、様々な騒動を治めていく。焼け出された男が、いきなり他者を切りつけた事件。神隠し騒動に、吉原から逃げた女郎……。常にハッピーエンドになる、というわけではないのだが、町方がいるから、世は治まる、という父の教えを忠実に守り、謙虚に人々の言葉に耳を傾ける虎之助だからこそ納めることができた、というのは素直に納得できる。
また、その中での構成というのは巧み。
全5章の構成で、基本的にはそれぞれの章でそれぞれの事件が解決される連作短編の形ではあるのだが、籠に捨てられていた男の異体を巡る騒動。幕府の蔵に帳簿よりも多く入っていた米。虎之助の恋心。こういったものが、作品全体を貫いた謎として残っており、それぞれの章の登場人物らとも絡まって明かされる。単なる短編ではなくて、という辺りはさすがの貫禄というところだろう。
作品発表のタイミング的には東日本大震災のあとであり、表紙も自身による大火事などが描かれている。なので、一種のパニック小説的なものを想像していたため、予想外だと感じるところはあった。そして、特に後半は、地震による失業とかが背景にはあるが、単純な捕物帖状態で「動乱始末」というタイトルに違和感を覚えたし。その辺りは、マイナスというか、誤解を与える部分があるかも、とは思う。
なので、最初から純粋に時代小説、捕物帖として認識して読んだほうが違和感とかを感じずに楽しめるんじゃなかいかと思う。

No.3083

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