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(書評)ペンギン・ハイウェイ

著者:森見登美彦

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
(2012/11/22)
森見 登美彦

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ぼくはまだ小学4年生だが、大人に負けないほどいろんなことを知っている。毎日、きちんとノートを取り、沢山の本を読む。そして、様々な研究を行っている。そんなある日、ぼくが住む街に突如、ペンギンが現れた。そして、ぼくは、歯科医院のお姉さんが、その事件に深く関与していることを知り、ペンギンについての研究をはじめて……
第31回日本SF大賞受賞作。
まず、作品の内容紹介などで「日本SF大賞受賞作」と書いてあるのを見て思った。「森見さんがSF!?」と。凄く偏見まみれの見方なのだけど、「SF」というと、極めて複雑な論考などで固められたもの、という印象が先にたつのだ。それが、森見さんの作品とあまり合致せず、どう転がっていくのか気になって仕方が無かった。
で、いざ、読み始めるとちょっと背伸びをした小学生である「ぼく」が、日常の様々の中で、ペンギンの、そして、お姉さんのことについて調べる、という何ともほのぼのとした描写が可愛らしい作品だった。「サイエンスフィクション」つまり、科学的創作。その意味で言えば、様々に仮説を出し、それを実験・観察によって確かめていく「ぼく」の研究というのは、立派な科学研究だ、と納得したのだ。
その研究対象となるのは、お姉さんとペンギンについて。ペンギンを生み出したりする、不思議な力を持ったお姉さん。それは一体、どういう原理なのだろうか? しかも、お姉さん自身も、出せたり、出せなかったりするし、体調の変化もあるようだ。さらに、クラスメイトの女の子・ハマモトさんの見つけた「海」などの不思議な存在も出てくる。色々と知識をもっている「ぼく」が、友達であるウチダくんや、ハマモトさんと色々と調べていく姿は微笑ましくもあり、楽しい。
そして、その間に挟まれる「ぼく」の小学生らしい日常がさらにそれを増してくれる。クラスのガキ大将とも言えるスズキくんらとの対立。川の源泉を求めての「冒険」。お姉さんに憧れつつも、なぜかおっぱいのことばかり気にしてしまう、なんていう、思春期に入るかどうかくらいの幼い感情。それらが混じるので余計にかわいらしい、と感じた。そんな「ぼく」を育て、アドバイスをくれるお父さんも良い味出してる。人一倍、知識があり、それを自負しながらも、やっぱり幼さを感じさせる「ぼく」が良いリアリティを持って描かれている。
そんな物語は、終盤、思わぬ展開をし、ちょっと悲しさを感じさせる結末を迎える。でも、そこにもまっすぐに「ぼく」は立ち向かう。これも、良い意味で「ぼく」の幼さゆえのまっすぐさがあるからこそ素直に納得できる。そういう意味では設定が上手く作られ、それを活かしきったのだな、と思わずにはいられない。
魅力的な謎がありながら、日常描写などが長く、もどかしさを感じた、なんていうところがあった、というのは否定しない。けれども、それが積み重なったからこその「ぼく」に対する感情移入だとも思う。面白かった。

No.3105

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