(書評)はぶらし

著者:近藤史恵

はぶらしはぶらし
(2012/09/27)
近藤 史恵

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脚本家である鈴音のもとへ掛かってきた一本の電話。それは、高校時代の友人・水絵からの助けを求めるもの。子連れで離婚。仕事もリストラされてしまった。1週間だけとめて欲しい。戸惑いながらも、水絵母子を受け入れるのだったが……
日常のちょっとした感覚の違い。それを文字通りに表すのが、タイトルである「はぶらし」。突然やってきたから、と言うことで母子に貸した「歯ブラシ」。すぐに自分のを買うのだが、新しいものを鈴音に返すのではなく、使ったものを文字通りに「返す」。たかだか数百円のものだから、目くじらを立てるような話ではない。けれども、そういう感覚の違いがどうにも理解できない。そんなやりとりから見えてくる、水絵という人間の姿……
作中で描かれるように、鈴音は凄くお人よし。そんな彼女の目から見ても、水絵は……というのはわかる。
ただ、同時に、これって、鈴音の立場から見たから、とも同時に思えてならなかった。
歯ブラシのエピソードは極端としても、風呂の湯を抜く、抜かない、なんていう生活習慣の違いは正しい、正しくないとはかけ離れたところのもの。鈴音が紹介した仕事に対する態度、というものも、人間関係の中で雁字搦めにされていれば忌避したくなるのはわかるし、まして、いざ、面接に言っての出来事をそのまま紹介してくれた鈴音に語れるのか? というと……。読者の立場というのは、基本的に第三者だし、しかも、この作品の場合、鈴音の視点のみで綴られる。それだけに、水絵って奴は……と怒りを覚える、というのとも違う印象をずっと抱いた。自分だって、他人から見たら……とか思っちゃうと余計に。
そういう意味で、読んでいて非常に、居心地の悪さという意味での「嫌な感じ」を味わい続けた。それを描けるのは素直に素ごと思う。
ただ、物語としては、そこで終わっちゃうの? という感じもする。ある意味、これが一番、現実的な解決方法なのだろうけど……。水絵に対する疑惑とか、そういうのも含めて、ちょっと投げっぱなしに感じたところもあったし。
やっぱり、物語であるからには、そういう嫌な感じがどこへ行き着くのかを見てみたかった……というのは贅沢な要望なのだろうか?

No.3120

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  • 2014.07.08 (Tue) 15:21 | 粋な提案