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(書評)反射

著者;ディック・フランシス
翻訳:菊池光

反射 (ハヤカワ・ミステリ文庫―競馬シリーズ)反射 (ハヤカワ・ミステリ文庫―競馬シリーズ)
(1986/08)
ディック フランシス

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レース中のミスばかりを狙う競馬写真家のジョージ・ミレスが事故死した。周囲に悲しむ競馬関係者は皆無、という状況の中、障害騎手であり、アマチュア写真家でもあるフィリップは、ジョージの妻が立て続けに強盗に襲われたことを知る。そんな中、フィリップは、ジョージのミス写真を手に入れるのだが……
著者の作品を最初から読み続けているのだが、ここのところ、物語はやや複雑化しつつある、という印象を抱いていた。複数の事件が絡み合ったり何なり、という感じで。ところが、本作は、久々にすっきりとした話のように感じる。一応、サイドストーリーとして、母を勘当した祖母から、実は異父妹がおり、それを探せ、というものはあるが……
騎手や調教師といった面々からは蛇蝎のごとく嫌われていたジョージ。しかし、だからといって、その妻のマリィや、息子でありフィリップの同僚騎手のスティーヴに罪はない。強盗に襲われ、傷つくのは忍びない。もし、ジョージの写真が原因だとすれば……怒りを覚え、その写真の謎を解くことに……
そんな物語が、騎手としての日常をはさみながら展開していく。アマチュア写真家という主人公の立場を利用し、写真の中の謎解きをしていくのは、暗号ミステリ的な面白みがある。現像液とか、そのときのテクニックとか、結構、マニアックな知識が駆使されており、これを解明するのは難しいと思うけど
そして、そこから明らかになっていくのは様々な事実。数年ぶりに不正をするように迫る馬主に苛立ち、ジョッキイズ・クラブの両親と呼ばれるホワイト卿の失点を目にする。さらに、ジョッキイズ・クラブの役員となった富豪の黒い噂……。様々なものを目の当たりにしていく……。騎手としての生活をし、そこにプライドを持つフィリップと対比的な人々。それは、また、祖母の考えもまた……。
解説(?)の中の井崎脩五郎氏が、指摘しているように「騎手に止めを刺すのは幻滅感」というのが、この物語の結末につながるのだろう。いろいろと傷跡は残したのだけど、残りわずかな騎手生活を楽しみたい。そんなフィリップの残された騎手人生が良いものでありますように……と思わざるを得ない。

No.3148


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