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(書評)「童石」をめぐる奇妙な物語

著者:深津十一

「童石」をめぐる奇妙な物語 (『このミス』大賞シリーズ)「童石」をめぐる奇妙な物語 (『このミス』大賞シリーズ)
(2013/03/11)
深津 十一

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自分が死んだら、自分の口の中に石を入れ、火葬が終わった後、その石を回収し、ある人物に届けてほしい。高校生である木島耕一がそんな指示を受けた直後、祖母は死亡した。何とか、その指示を守り、石をもって行った先は、林という風変わりな老人の元で……
第11回『このミス』大賞優秀賞受賞作。
題名が『奇妙な物語』とあるけど、まさにそんな感じ。
作中、いわゆる刑法犯罪というのは行われない。物語に出てくるのは、奇妙な石たち。紹介文でも登場する祖母の石こと「死人石」。割ると文字が浮かび出る、という「仮名石」。もともと、香りを放つ石だが、割るとさらに強烈な香りを放つ「香玉」。枕の下に入れて眠ると「白い夢」を見ることができるという「白夢石」。そんな奇妙な石たちが何とも印象的で記憶に残る。
さらに、それを彩るキャラクターも印象的。主人公の耕一は普通の少年という感じだけど、人を食ったところのある林老人。奇妙な石を大金を払って手に入れても、それを破壊してしまう行動の謎は何なのか? そして、そんな林老人のことを知り、耕一とともに林老人の屋敷へ赴くことになるナオミ先生。林老人も、ナオミ先生も、どちらも人を驚かせたり、というような性格なので、そのキャラクター性だけでも十分に読ませる。そして、そのキャラクターがまじめなだけなく、石を割った上での思わぬオチ、それもホラーのような事件もあれば、ギャグそのものもある。こういう緩急のつけ方が絶妙。そんな物語のタイトルでもある「童石」についての来歴は、結構、荒唐無稽なのだけど、ここまで奇妙な石の存在を散々語られているため、自然に受け入れられるのも見事。
その童石と、祖母の死人石の関係性は、それほど関連付けられているとは言えない気がする。でも、それをすることでしっかりと伏線を回収しているのだから、これはこれで見事というべきなのだろう。面白かった。
巻末解説によれば、やや地味だから大賞を逃した、とのことだけど、納得できるようなできないような……。このあたりに『このミス』大賞の傾向っていうのが現れている、というのは思うが。

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