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(書評)奪回

著者:ディック・フランシス
翻訳:菊池光

奪回 (ハヤカワ・ミステリ文庫)奪回 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1989/11)
ディック・フランシス

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ヨーロッパでもトップクラスの女性騎手・アーレッシアが誘拐されて6週間。警察の勇み足などがありつつも、誘拐対策会社の社員であるアンドルーは交渉を重ね、無事、人質の解放に成功する。アーレッシアのケアなどをしながら、本国・イギリスへ戻ったアンドルーだったが、今度はダービー馬のオーナーの息子が誘拐されるという事件が起こり……
まず最初に思ったのは、これが日本で発表された当時、かなり意表をつく設定だったんじゃないかな? ということ。この作品がイギリスで刊行されたのが1983年。日本では1985年。この時代に、誘拐対策企業というものが存在し、無事に開放させることを生業としている。犯罪者側もプロとして活動をしている。現在では、交渉人を題材とした作品が色々と出ているけど、当時は……と思えてならない。
そして、本作の面白さは、何よりも、誘拐犯と被害者、というものの裏に暗躍する存在がいる、というところ。勿論、被害者側にいるのは主人公のアンドルー。被害者を励まし、人質が無事に開放されるための様々な方策を提案し、実行していく。それだけでも面白いのだが、一方の誘拐犯にもそれをプロデュースしている存在が見え隠れしてくる。表に出てこないその相手が何者なのかはわからない。しかし、イタリア、イギリス、そしてアメリカと次々と起こる事件にはなぜか競馬が関係していて、正体が良くわからず逮捕されることもなく逃げ延びる存在がいることがはっきりしていく……。単に主人公と誘拐犯という対決だけでも、十分に読み応えがあるのに、その裏方同士の対決という設定を作っていくのはすごいことだと思う。
同時に、主人公アンドルーのプロとしての働きが格好良い。常に冷静沈着に行動をし、人質より犯人確保と言う警察をも上手く動かす。さらに、最初の事件の被害者であるアーレッシアへも常に最善の形でケアしていく。アーレッシアへの対応とかは、ただ冷静というだけでなく、優しさなども感じさせる。まぁ、そこからアンドルーとアーレッシアのロマンスへ……なんていうのを考えると、最初から多少は意識していたのかもしれないけど(笑)
誘拐犯と誘拐対策企業社員の対決、というところだけを取れば、競馬が舞台でなくてもよさそうなものだけど、『名門』の中でも出てきた種牡馬ビジネスの要素も取り入れてみたりとか、競馬の部分の肉付けも見事。ここまで読んできた著者の作品の中でもかなりお気に入りの作品。

No.3159

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