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(書評)美人薄命

著者:深水黎一郎

美人薄命美人薄命
(2013/03/20)
深水 黎一郎

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大学の単位のため、嫌々ながらも、独居老人への弁当宅配のボランティアを始めた総司。様々な老人の姿に驚き、呆れることも多い中、片目の視力を喪った老婆・カヨとの親交を重ねることになっていく。そんなある日……
「切なさ溢れる衝撃の結末が待ち受ける、長編ミステリー」なんてコピーがついているのだけど、何か違和感を覚えるのは自分だけだろうか? いや、読み終わって切なさも、さわやかさも感じたのは間違いないのだけど……
まぁ、読んでいて7割くらいのところまで、これがミステリーだと思うことはないのではないかと思う。バイトに、趣味の競馬に、悪友とのやりとりに……という日々の中、単位のため、嫌々始めたボランティア。すぐに辞めてやる、という気持ちさえあるのだが、それでも何となく続けてしまう。この辺り、一見、不真面目ながらも根は正直な総司のキャラクターというのが良く伝わってくる。
そして、そんな総司が出会うのが、片目の視力を喪った老婆・カヨ。このカヨのキャラクターが何とも良い。84歳という年齢だけど、自分では思い切り若い(つもり?)で総司に話しかける。基本的に、おばあちゃんなのだけど、ここぞで、総司の笑いのツボをつく。はじめは、話に付き合わされて……なのだけど、何か楽しい気分になる総司の気持ちっていうのがすごくわかる。何だかんだ言って、こんなお婆ちゃんと話するの楽しいもん。
それで、だんだんとボランティア精神に総司が目覚めて……なら、普通の小説なのだろうけど、そこから急転直下の展開が待ち受ける。カヨ婆ちゃんが語った自らの過去に隠された真相……。切ないと言えば切ないのだけど、でも、決して悲劇的というわけでもなくて……なんか、これはこれで幸せだったのではないかと思えるから不思議。そして、それを知った総司の決断も、やっぱり、根は真面目で良い奴なんだな、というのが感じられて気持ちが良かった。
まぁ、同じボランティアに参加していた少女・沙織の話とか、途中で出てきたオカモチ泥棒とか、よくよく考えてみると「ここはどうなった?」と思うところがあるのだけど、メインとは関係がないから、ということなのだろう。
本当、読後感がすばらしい。そして、ある意味、これって、この上ない純愛小説なんじゃないか、とも思う。

No.3192

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