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(書評)アトロシティー

著者:前川裕

アトロシティーアトロシティー
(2013/02/16)
前川 裕

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隣家に住む姉妹に頼まれて、悪質訪問販売業者と対峙することになったジャーナリストの田島。その訪問業者との対立は、ひょんなことで知り合った刑事・緑川が、彼らを逮捕する、ということで決着する。ところが、その緑川は、逮捕された訪問販売業者の一味に、かつて世間を震撼させた少年事件の加害者がおり、彼らが、金のために殺人も繰り返しているのではないか、と疑っていることを田島に告げ……
リーダビリティが非常に高い。まずは、それがいえる。
物語の冒頭、悪質訪問販売業者とのやりとりから非常にテンポの良い形で物語が展開して行き、どんどん読み進めることが出来る。そして、そこから、その訪問販売で金を騙し取るだけにとどまらず、相手を殺してまで金を奪っている、という疑惑が広がることで、物語に引き込まれた。そして、そこから、取材を開始する田島だが、自分のところへと不可思議な女性が現れたり、はたまた、刑事である緑川からの情報を雑誌に掲載するかどうかを巡って対立したり……と、次々と話が広がっていく。その当たりの広げ方なども、手馴れたものだな、というのを感じる。
まあ、怖いわな。個人的にも、なんか、いかにも胡散臭い訪問販売業者が自分の家にきたり(9割以上はY新聞社の拡張員だけど)、っていう経験があるけど、ただ、ものを売りつけられるだけでなく、場合によっては命も……。こういうのはドアを開けない、というのが基本的なやり方、とは言え、そうそう上手く出来るわけではないし、そうやって開けたところ……となったら。前作『クリーピー』のように、一見、普通だけど怪しい隣人、というのも怖いけど、訪問販売とかは身近なだけに、すぐ近くに……という怖さを感じた。リーダビリティの高さと、テーマ性は非常に面白い。
ただ……
話の広げ方はこなれているし、次々と事件を動かしていくのも良いのだが、良くも悪くも無駄がなさすぎて何となく人工的な匂いを感じてしまう。田島が過去に書いた記事。田島の周囲の人物。そういうものが全て事件に大きくかかわりを持ちすぎてしまうため、ちょっと作り過ぎと思うし、また、何となく、終盤のひっくり返しが予測できてしまうのだ。
普通に考えて、デビュー2作目の作家の作品として考えれば、出来の良い作品だと思う。でも、何か、ある程度、既に作品を発表している作家の、「普通の作品」と感じてしまうのは、著者に対する期待が高いから、なのだろうか?

No.3195

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