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(書評)ZONE 豊洲署刑事・岩倉梓

著者:福田和代

ZONE 豊洲署刑事・岩倉梓ZONE 豊洲署刑事・岩倉梓
(2012/08/01)
福田 和代

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江東区豊洲。再開発により、日本でも数少ない人口が激増している地域。そこは、従来とは異なる新たな街が出来つつある。そんな豊洲を舞台に、生活安全課の女性刑事・岩倉梓の日々を描く連作短編集。
全5編を収録。
刑事モノ。うちのブログでもそういう作品は沢山扱っているけど、考えてみるとほとんどが捜査一課。たまに、マル暴刑事である四課を中心にした作品がある、という感じで、生活安全課というのを題材にしたのははじめてかも(探せばあるかも知れないが) 殺人、暴力団以外は何でも手がける、という生活安全課らしく、子供を放って失踪した母親、身元不明の遺体、脅迫事件、ストーカー事件、詐欺事件とバラエティにとんだエピソード。
で、何かこの作品集。最初の1編でこれでもか、と重い気持ちにさせて、そこからだんだんと優しさを背後に感じさせるような構成というのが印象的。
とにかく、1編目の『橋向こうのかぐや』は救われない。幼い兄妹を置いて失踪した母親。子供は何とか餓死寸前で救われるが、兄は母を求めてその病院から消えてしまう。そして発見される母親の遺体……。母親の死因などは某有名人が起こした事件と共通するものを感じるのだけど、急ごしらえで作られた街の中にあるエアポケットという印象だけが強く残る。
ところが、2編目で多少、暖かい気持ちになると、3編目の『ハーメルンの母たち』は派閥争いを繰り広げる母親に苦笑いをしながらも、犯人の機転と全てを知った主人公・梓の決断にほっとさせられる。出来すぎといえばそうなのだけど、物凄く優しさを感じる1編に仕上がっている。
そして、上手いな、と感じたのは5編目の『路傍のハムレット』。東日本大震災を題材にして行われた詐欺事件。犯人はアッサリと捕まったが、その犯人の動機にあったのは……。エアポケットがあることの虚しさだけをこれでもか、と見せ付けられた1編目と実は共通する部分のある事件。犯人は、その虚しさだけを残して終わる。しかし、そんな犯人に対して、「こうしてくれていれば……」という視点の存在。1編目で、かつてのよさが喪った「地域」ではなく「空間(ゾーン)」という言葉があったのだが、そうじゃないんだ、と教えてくれる。それに何かほっとした。
そんなに派手なことをするわけではなく、物凄く頭の切れる、というわけでもない主人公・梓。その活躍をもっと見たい木もするし、でも、ここで終わるからこそ綺麗なのだ、とも思う、何ともやきもきとした読後感が残る。

No.3211

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