(書評)64

著者:横山秀夫

64(ロクヨン)64(ロクヨン)
(2012/10/26)
横山 秀夫

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昭和から平成へと動いた1989年1月。お年玉を持った一人の少女が誘拐された。少女は殺害され、犯人を取り逃したその事件はD県警最悪の事件となった。それから14年、元刑事であり、現在は広報官となった三上はマスコミに対し、強硬な態度を取るように、との指示によりマスコミとの関係に悩む。そして、そのような中、警察庁長官の被害者遺族宅訪問の手はずを整えることになり……
7年ぶりに刊行された著者の作品。おかげで久々に読んだわけだが……「濃厚」。何よりも、それに尽きる。
警察にとって、マスコミは勝手に動かれると捜査などに支障をきたす厄介な存在。その一方で、様々なキャンペーンなどを伝えるためには切っても切れない存在。都合よく使いたいが、そう上手く使える存在ではない。しかも、情報の一本化という中で、三上ら広報官は、十分な情報もなくメディアとの窓という矢面に立たされる。
はっきり言って、これだけでも十分に読み応えのある題材になると思う。しかし、矢面に立たされるのはあくまでも序章。警察庁長官の訪問を巡り、14年前の事件に様々な疑惑が感じられ始める。警察に対して非協力的な被害者遺族。「幸田メモ」なる存在。そして、起こる刑事部と警務部の全面戦争……
元刑事であり、刑事部に所属しているものの、広報官という立場は警務部。故に常に両者から疎まれてしまう。刑事部VS警務部。警察VSマスコミ。さらに娘が失踪中というような三上の抱えている事情が、三上の行動そのものにも影を落とすなど、多重構造をこれでもかと抱えて進む物語はただひたすらに濃厚と感じさせる。640頁というボリュームがあるのだが、間延びなどは感じず、それどこからこれでもかと濃密さを感じさせるのだから脱帽。そして、そういう多重構造の中で起きる新たなる誘拐事件……
執念の賜物たる新たなる事件。そして、その解決の中で見えたのはD県警、いや、様々なしがらみの中で動いた警察そのものの威信失墜といえる真相。けれども、ここまで来たのなら、これしか膿を出し切る手段はなかったようにも感じる……
結果オーライ。
そんな中で、三上が自分の居所を、自分のすべきことを決意した。事件そのものの後味は悪くても、その部分はハッピーエンドなのかもしれない。

No.3217

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  • 2017.07.28 (Fri) 21:06 | じゅうのblog