(書評)バイバイ、ブラックバード

著者:伊坂幸太郎

バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)バイバイ、ブラックバード (双葉文庫)
(2013/03/14)
伊坂 幸太郎

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バスに乗せられ、どこかへと連れて行かれようとする星野一彦、最後の願いは五人の恋人たちに別れを告げること。そんな彼の隣には、彼を見張るため、さまざまな言葉が塗りつぶされた辞書を持つ大女の繭美。そんな二人と、女たちの別れを描いた連作短編集。
「なんとも不思議な数週間」とあるのだけど、まさにそんな感じの物語。
正直者で、お人よし。そして、五股をかけていた男、星野がその女性たちに別れを……。何か、その設定だけを聞くと修羅場とかが描かれた作品のように感じるのだけど、当然、そんなことはない。著者らしい、何とも奇妙な、独特の味のあるやりとりが綴られ、そして、何があるわけではないのだけど、何となく星野の魅力と、そんな彼との別れを女性が納得できる結末がまっている。
とにかく、その中心となる繭美とのやりとりが面白い。上品とか、そういう言葉がすでに辞書になく、文字通り「傍若無人」を絵に描いたような彼女が見もふたもない言葉で女性を評する。そして、それに突っ込みを入れながらも、しかし、状況的にも、腕力的にも適わないため、結局、従わざるを得ない。そして、シリーズが進むにつれ、だんだんと対処の仕方も覚えていく……。そのあたりの関係性が何とも奇妙で惹かれる。そして、そういうやり取りを通して、最後まで読み終えると、やはり、星野が何とも言えない魅力を持った人間だったのだ、と感じる。ある意味、こういうのを真の「人たらし」っていうのかなぁ……と。
正直なところ、ここのところ読んだ著者の作品と同じく、過去の文芸作品を元ネタとしている。本作は、太宰治の『グッド・バイ』がそれになるらしい。しかし、私は読んでいないので、そことの比較はできない。知っていれば、また、別の感慨を得ることができたのかな? なんていうのは思う。
オチとか、そういうところは「?」というのもあるのだけど、これはいつものこと。星野の「人たらし」っぷりを堪能できた。

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  •  「バイバイ、ブラックバード」伊坂幸太郎
  • 太宰治の未完にして絶筆となった「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、 まったく新しい物語。 1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに
  • 2013.09.13 (Fri) 16:20 | 粋な提案
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  •  『バイバイ、ブラックバード』 伊坂幸太郎
  • 「伊坂幸太郎」の長篇小説『バイバイ、ブラックバード(英題:Bye Bye Blackbird)』を読みました。 [バイバイ、ブラックバード(英題:Bye Bye Blackbird)] 『ホワイトラビット』、『オー!ファーザー』に続き、「伊坂幸太郎」作品です。 -----story------------- 「星野一彦」の最後の願いは何者かに“あのバス”で連れていかれる前に、五人の恋人た...
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