著者:ディック・フランシス
翻訳:菊池光
「ヒッチハイカーを絶対に乗せてはならない」 競走馬輸送を手がけるフレディは、事あるごとに、そう運転手に言い聞かせてきた。にも関わらず、運転手は一人の男を乗せてしまった。しかも、死亡した状態で……。直後、その車に何者かが忍び込み、翌日には修理工が車に携帯用金庫が取り付けられていたことを発見する。だが、その修理工も直後に不可解な死を遂げて……
ミステリという意味では、この作品ほど、同時多発的に謎を用意した作品も珍しいのではないか? そんなこを読みながら思った。何しろ、冒頭から謎がたくさんある、というのがわかると思う。
死亡したヒッチハイカーは何者なのか? 修理工が見つけた金庫は何のためなのか? さらに、その修理工の死の理由は? それだけでなく、その金庫の中から発見されたのは謎のケース。一匹、消えてしまったウサギ。破壊されてしまったパソコンに、死亡した修理工の残したメッセージの秘密。次々と謎が登場し、それらがどうつながるのか……と引っ張っていく様は過去のこれまで読んだ著者の作品の中でもトップクラスだと思う。
しかも、そのテーマがいかにも現代的。本作が発表されたのは1992年だが、この時期からコンピュータ・ウィルスの話などを取り入れているし、また、謎のケースで運ばれたのが何なのか? というのは、これを読んだ2013年時点でまったく古くなっていない。というか、むしろ、今、ちょうど、大きな問題としてニュースなどを飾っていることである。先見性の高さを感じずにはいられないのである。
と、これだけを書くと、ただ謎が出て、それを追う、という話に見えると思うのだけど、そうでないのも特徴。冒頭に書いたとおり、主人公・フレディは馬の輸送を専門に行う運送会社の社長。当然、そちらの業務も待っている。流感で従業員が倒れる中、残った従業員を振り分けで仕事をする。我侭な客の要望を受け入れ、時になだめすかして業務を続ける。そういう「お仕事小説」的な要素も興味深く読むことが出来るのだ。
その分、分量が多くなってしまった感はあるけど、いたるところに上手さを感じた。
No.3249

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「ヒッチハイカーを絶対に乗せてはならない」 競走馬輸送を手がけるフレディは、事あるごとに、そう運転手に言い聞かせてきた。にも関わらず、運転手は一人の男を乗せてしまった。しかも、死亡した状態で……。直後、その車に何者かが忍び込み、翌日には修理工が車に携帯用金庫が取り付けられていたことを発見する。だが、その修理工も直後に不可解な死を遂げて……
ミステリという意味では、この作品ほど、同時多発的に謎を用意した作品も珍しいのではないか? そんなこを読みながら思った。何しろ、冒頭から謎がたくさんある、というのがわかると思う。
死亡したヒッチハイカーは何者なのか? 修理工が見つけた金庫は何のためなのか? さらに、その修理工の死の理由は? それだけでなく、その金庫の中から発見されたのは謎のケース。一匹、消えてしまったウサギ。破壊されてしまったパソコンに、死亡した修理工の残したメッセージの秘密。次々と謎が登場し、それらがどうつながるのか……と引っ張っていく様は過去のこれまで読んだ著者の作品の中でもトップクラスだと思う。
しかも、そのテーマがいかにも現代的。本作が発表されたのは1992年だが、この時期からコンピュータ・ウィルスの話などを取り入れているし、また、謎のケースで運ばれたのが何なのか? というのは、これを読んだ2013年時点でまったく古くなっていない。というか、むしろ、今、ちょうど、大きな問題としてニュースなどを飾っていることである。先見性の高さを感じずにはいられないのである。
と、これだけを書くと、ただ謎が出て、それを追う、という話に見えると思うのだけど、そうでないのも特徴。冒頭に書いたとおり、主人公・フレディは馬の輸送を専門に行う運送会社の社長。当然、そちらの業務も待っている。流感で従業員が倒れる中、残った従業員を振り分けで仕事をする。我侭な客の要望を受け入れ、時になだめすかして業務を続ける。そういう「お仕事小説」的な要素も興味深く読むことが出来るのだ。
その分、分量が多くなってしまった感はあるけど、いたるところに上手さを感じた。
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