著者:真保裕一
県下最大の「お荷物路線」と呼ばれる第三セクターのローカル線・もりはら鉄道。県庁からの出向で、副社長となった鵜沢は、そのやる気のない社員たちの姿に苛立つことばかり。そんな中、もりはら鉄道の会長で、地元の有力者・五木田が社長に抜擢したのは、新幹線のカリスマアテンダント・篠宮亜佐美だった……
お仕事小説の皮をかぶったミステリ小説! とか言っちゃって良いのかな?
「この鉄道の経営は、素人以下です」「お金がないなら、智恵を出すのよ」
こんな亜佐美の台詞が象徴するように、まずは、亜佐美がいきなりドラスティックに改革を開始する。ワンマン運転の運転士にニックネームの名札をつけさせる。話題性があるうちに、と、亜佐美自ら客寄せパンダとして電車に乗り、物販なども担当する。そして、その間に二の矢、三の矢の企画を模索する……。
この作品のモデルとなったのは、宮城県にあったくりはら田園鉄道らしいのだけど、イベント列車を走らせ、物販などで……っていうと、例えば、「ぬれせん」とかで再起した銚子鉄道とかを思い浮かべる。正直なところ、イベント頼りとかで良いの? とか、最初は思ったのだけど、この作中の鉄道みたいな状況になると、もう、それしかないのだろう……というのもわかる。文字通り「何でもアリ」。でもって、物語は、基本的には鵜沢の視点で綴られるのだけど、時々、亜佐美視点が混じる。それが、上手く機能している。
亜佐美のお目付け役的な存在である鵜沢。実際、行動は役人のそれで、「名前の通り、ウザい」とか言われるのだけど、いざ、企画などを考えれば意外に思い切ったものを出すし、実務などもしっかりとこなす。これは、亜佐美の登場で、会社の経営が上向きに、とか、そういうのもあるんだろうけど、二人の関係が上手く描かれていて楽しかった。
ところが、そういうお仕事小説がだんだんときな臭さをみせ始める。相次ぐトラブル。最初は老朽化した施設のせい、と思われたが、そこに人為的な何かが感じられ、だんだんと県の行動もおかしくなっていく。その背景にあるのは……。陰謀が絡んでくる後半は、好みが別れそうな気がする。個人的にはちょっと、と感じた。
ハッピーエンドにするため、最後、強引にまとめた、っていうのは良いのだけど……何か、この陰謀部分のほうがどうにも……。いや、陰謀そのものは良いのだ。そこは良いのだけど、実行するのに危ない橋渡りすぎでしょ、と。慎重にはやっているけど、見つかったら一発でアウトだし、怪しさもたっぷりと醸し出しているわけだし。先に書いたように、好みの問題だけど、私はちょっとそこはマイナスと感じた。
No.3251

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県下最大の「お荷物路線」と呼ばれる第三セクターのローカル線・もりはら鉄道。県庁からの出向で、副社長となった鵜沢は、そのやる気のない社員たちの姿に苛立つことばかり。そんな中、もりはら鉄道の会長で、地元の有力者・五木田が社長に抜擢したのは、新幹線のカリスマアテンダント・篠宮亜佐美だった……
お仕事小説の皮をかぶったミステリ小説! とか言っちゃって良いのかな?
「この鉄道の経営は、素人以下です」「お金がないなら、智恵を出すのよ」
こんな亜佐美の台詞が象徴するように、まずは、亜佐美がいきなりドラスティックに改革を開始する。ワンマン運転の運転士にニックネームの名札をつけさせる。話題性があるうちに、と、亜佐美自ら客寄せパンダとして電車に乗り、物販なども担当する。そして、その間に二の矢、三の矢の企画を模索する……。
この作品のモデルとなったのは、宮城県にあったくりはら田園鉄道らしいのだけど、イベント列車を走らせ、物販などで……っていうと、例えば、「ぬれせん」とかで再起した銚子鉄道とかを思い浮かべる。正直なところ、イベント頼りとかで良いの? とか、最初は思ったのだけど、この作中の鉄道みたいな状況になると、もう、それしかないのだろう……というのもわかる。文字通り「何でもアリ」。でもって、物語は、基本的には鵜沢の視点で綴られるのだけど、時々、亜佐美視点が混じる。それが、上手く機能している。
亜佐美のお目付け役的な存在である鵜沢。実際、行動は役人のそれで、「名前の通り、ウザい」とか言われるのだけど、いざ、企画などを考えれば意外に思い切ったものを出すし、実務などもしっかりとこなす。これは、亜佐美の登場で、会社の経営が上向きに、とか、そういうのもあるんだろうけど、二人の関係が上手く描かれていて楽しかった。
ところが、そういうお仕事小説がだんだんときな臭さをみせ始める。相次ぐトラブル。最初は老朽化した施設のせい、と思われたが、そこに人為的な何かが感じられ、だんだんと県の行動もおかしくなっていく。その背景にあるのは……。陰謀が絡んでくる後半は、好みが別れそうな気がする。個人的にはちょっと、と感じた。
ハッピーエンドにするため、最後、強引にまとめた、っていうのは良いのだけど……何か、この陰謀部分のほうがどうにも……。いや、陰謀そのものは良いのだ。そこは良いのだけど、実行するのに危ない橋渡りすぎでしょ、と。慎重にはやっているけど、見つかったら一発でアウトだし、怪しさもたっぷりと醸し出しているわけだし。先に書いたように、好みの問題だけど、私はちょっとそこはマイナスと感じた。
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