(書評)福家警部補の報告

著者:大倉崇裕

福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)
(2013/02/21)
大倉 崇裕

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有名漫画家、正統ヤクザ、老エンジニア夫婦。それぞれの起こした事件に福家警部補が挑む連作短編集。シリーズ第3作。
このシリーズは倒述形式の作品である、ということが特徴なのだけど、シリーズを重ねたこともあり、それぞれのエピソードがかなり緻密になっているように感じる。
有名漫画家であるみどりが、編集者である真理子を殺害する『禁断の筋書』。真理子が酔っ払い、風呂場で転倒して死亡したもの、という形を作ったわけだが……。
一見、ただの事故にしか見えない状況の中から、同じアパートの住人から得られたちょっとした情報から疑いをもち、追い詰めていく、というのはある意味、オーソドックスな展開。けれども、1編目、作品の導入と言う意味でも良い感じにまとまっている。……と、同時に、犯人と被害者の関係が、同じサークルで活躍していた同人漫画家だったが……とか、その辺りは色々な世界に関する知識を持っている著者らしい設定だな、と感じる。
作中で最も分量があるのが、2編目『少女の沈黙』。一年前に解散した暴力団。そのナンバー2であった菅原が、元組長の娘を誘拐した同じ組だった2人を殺害する。
こちらは、事故に見せかける、とか、そういうところはなく、最初から事件であることは明らか(一応、犯人同士の同士討ち、という工作はあるが) ただ、その中で、自分が元いた組の組員たちを「堅気」にすべく奔走する菅原の、必ずしも「悪人」と言いがたい姿を描き、逆に、福家警部補のやり方には強引さもある。その辺りの対比というのが良い味になっていると思う。
最後の『女神の微笑』。銀行強盗を画策していた一団が、車内にあった爆弾によって死亡した。一団の中には、爆弾に詳しい技術者もいたことから、事故と見られたが……
このエピソードはかなり異色な話だと思う。事故に見せかけた死について、ふとしたことから疑問を抱き……。この辺りの流れはいつも通りなのだけど、犯人夫婦の奥さんの「完璧な計画だと、却って破綻してしまう」と、想定外の事態を楽しむ余裕。そして、犯人と特定されたあとでのまさかのオチ……と、これまでにない展開に驚かされた。こういうのもありなのか……
シリーズ3作目、ということもあり、かなり変化球を持ってきた、というのを感じた作品集だった。

No.3292

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