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(書評)海鳥の眠るホテル

著者:乾緑郎

海鳥の眠るホテル (『このミス』大賞シリーズ)海鳥の眠るホテル (『このミス』大賞シリーズ)
(2012/09/07)
乾 緑郎

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美術のヌードモデルをしながら、カメラの専門学校へ通う千佳。若年性アルツハイマーになってしまった妻・君江を抱える靖史。廃墟と化したホテルで暮らす記憶喪失の男。それぞれの記憶と現実が工作するとき……
これは、謎解きとか、そういうタイプの作品ではないよな……うん。それぞれの間へのつながりとか、そういうものはあるにはあるのだけど、それよりも、それぞれの物語と楽しむタイプの作品なのかな、と。
専門学校生である千佳は、同じ学校に通う青年・新垣と知り合い意気投合する。しかし、その一方で、以前、勤めていた会社の同僚で、恋人でもあった西川に付きまとわれてしまう。新垣の人柄に心惹かれながらも、何か十分に信用しきれないものを感じる。その一方で、「自分のしたいこと」のためにするモデルを否定し、付きまという西川に苛立つ。ある意味、西川の行動はストーカーなのだろうけど、印象とすれば、むしろ、「常識」を振りかざして行動を束縛する相手への苛立ちのような感じで、恐怖とはまた違った印象が残る。
一方の靖史の物語。病院での診断はアルツハイマー。記憶などに心配があるが、しかし、それを認められない君枝と、それを抱えた靖史の苦悩。身体に問題はなく、また、一見、問題がないように思えるからこその苦悩。こちらも、とんでもなく暴れるとか、そういう描写があるわけではないのだが、だからこそ、ちょっとした異変が苦しみに変わる。派手な部分ではないところで、苦悩を感じさせる描写というのは流石。
そして、それが記憶喪失の男によってつながる……
……のだけど、それがメインになっているという感じはしなかった。つながってびっくりとか、というわけではないし、また、それで何かすっきりとする、というわけでもない。何か、話としてのすわりをよくするためにつなげた、というか……
印象に残る描写力は相変わらず。そこをメインに私は楽しんだ、ということで締めて良いかな? と。

No.3314

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