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(書評)光秀の定理

著者:垣根涼介

光秀の定理 (単行本)光秀の定理 (単行本)
(2013/08/30)
垣根 涼介

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永禄6年、京の都で3人の男が出会った。腕の立つ貧乏侍・新九郎。謎の坊主・愚息。そして、一族の復活を目指す明智光秀。その出会いが、やがて、大きな歴史の流れを作り出していく……
これは、歴史小説……なのか? いや、実際の歴史をなぞっていることは間違いないし、小説であることは疑いようもない。ただ、歴史小説と言って頭に浮かぶ司馬遼太郎とかの作品のそれとは全く違う印象を抱く。何しろ、明智光秀を題材にしながらも、本能寺の変であるとか、山崎の合戦とか、そういうところはない。いや、その前、金ヶ崎の退却戦とかもない。あくまでもリアルタイムで進むのは、信長の上京まで。その後は、一気に歴史が下り、秀吉の天下が決した後、生き残った新九郎と愚息が、過去を語るような形で綴られるのみである。かなり特殊な構成と言える。
その中で物語を彩るのは、物事の解釈。見方。そのようなものである。
物語冒頭で出てくる愚息の行っている賭け事。一見、親も子も同じ確率であるように見える賭けだが、必ず勝つのは愚息。それは一体なぜなのか? 実は数学的には……。
そのようなところを発端にして、光秀、信長などのそれぞれについて解釈を与えていく。例えば、新参者でしかない信長が光秀を厚遇したのはなぜか? 光秀が信長に従い続けたのはなぜか? そして、なぜ裏切ったのか? 勿論、この謎については様々な解釈があって、私が読んだ作品でも、何度か出てきている。その中で、本作で描かれる「信長と光秀は同じ視点で世界を見ている」「しかし、目指す方向は違っていた」というものが、愚息の賭け事と上手く組み合わせて綴られており、その辺りの回収の仕方にうならされた。
もっとも、それ以上に、この作品における主人公3人が魅力的なのが素晴らしい。特に、謎の坊主・愚息。そして、愚息に「馬鹿」と言われ続けながら、だんだんと成長していく新九郎。この二人の掛け合いが非常に楽しかった。
最初にも書いたように、歴史小説としても、かなり風変わりな一冊。けれども、読んでいて面白かった。

No.3329
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