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(書評)島はぼくらと

著者:辻村深月

島はぼくらと島はぼくらと
(2013/06/05)
辻村 深月、五十嵐 大介 他

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瀬戸内海に浮かぶ冴島。そこで唯一の中学を卒業し、フェリーで本土の高校にかよう4人の少年少女たち。そんな彼らの目線を中心に描かれた連作長編……で良いのかな?
まず、なんで、「連作長編……で良いのかな?」なんて書いたのか、というと、本作は4章構成になっているのだけど、各章でそれぞれにひとつの決着がついて、それが最後に繋がる、というような構成を取っているため。なんか、加納朋子氏の作品とか、そういうものを髣髴とさせるような形になっているのだ。
さて、そんな作品については舞台となる冴島を説明した方がわかりやすいと思う。舞台となる冴島は先に書いたように瀬戸内海に浮かぶ小さな島。島には小中学校があるものの、高校はなく、高校生は本土へと渡って勉強をする。そんな島は、昔からの習慣が根強く生き残る一方で、村長らの施策で外部からの「Iターン」組も多く移住してきている。特に、シングルマザーなどを多く受け入れている。そんな島が舞台である。
著者の作品というと、例えば『水底フェスタ』とかみたいな、地方の慣習とかがこの上なくドロドロと渦巻いて……という作品もあり、本作もそんな雰囲気が垣間見える。ただ、そういうのをテイストとして入れながらも、何となく前向きな気分になれる物語になっていて凄くバランスが良いと感じた。これも、島のからっとした風土のせいなのかな?
物語は、「幻の脚本」を探しにやってきたという自称・作家の話、シングルマザーとして島に定住した元五輪メダリスト、島のコーディネーターとして活躍する女性、そして、島の過去にまつわっての話……という形。
個人的には2章、3章が印象に残る。五輪のメダリストとして脚光を浴びる一方で、そこで作られたイメージに縛られた蕗子。それは地元との、家族との溝となり、飛び出して島へとやってきた。故郷だから暖かい、ではなく、故郷だから冷たい。故郷は良い場所、みたいな作品も多い中、そういう負の面をさらっと書いてしまう辺りは著者らしい。3章もまた、そういうのを思う。地元の発展に全力を尽くしている村長。どう考えても立派な人物。しかし、そんな立派な人物であっても完璧ではない。強引なところもあるし、エゴなどもある。田舎の開発とか、政治とか、そういうところを考えても凄くリアリティを感じさせるエピソードになっていると感じた。
4章は、朱里の祖母が形見分けをしたい相手……というところから、島の過去があり、第1章で出てきた「幻の脚本」などが絡んだりでしっかりと纏め上げられる。修学旅行先で、たまたま、人気脚本家の赤羽環に出会って一緒に行動、とか、ちょっとご都合主義かな? と感じたところはあったにせよ、しっかりと収まるべきところに収まったのは気持ちが良いし、さわやかな気分になる。
著者の作品の中には思いっきりドロドロで、読んでいて気分が滅入るものもあるのだけど、先に書いたように、本作は暗いだけにならないバランスが秀逸で気持ちよく読み終えることが出来た。素直にお勧めできる一作。

No.3364

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  •  「島はぼくらと」辻村深月
  • 母と祖母の女三代で暮らす、伸びやかな少女、朱里。 美人で気が強く、どこか醒めた網元の一人娘、衣花。 父のロハスに巻き込まれ、東京から連れてこられた源樹。 熱心な演劇部員なのに、思うように練習に出られない新。 島に高校がないため、4人はフェリーで本土に通う。 「幻の脚本」の謎、未婚の母の涙、Iターン青年の後悔、 島を背負う大人たちの覚悟、そして、自らの淡い恋心。 故郷を巣立つ前に...
  • 2015.05.15 (Fri) 14:06 | 粋な提案