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(書評)祈りの幕が下りる時

著者:東野圭吾

祈りの幕が下りる時祈りの幕が下りる時
(2013/09/13)
東野 圭吾

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都内のアパートの一室で、一人の女性の腐乱遺体が発見された。手がかりの無い状態から捜査の結果、明らかになったのは遺体が滋賀県に住む女性である、ということ。しかし、アパートの借主である男性は行方不明。そのような中、刑事である松宮は、従兄弟である加賀から、近くで起きた火災現場で発見されたホームレスの遺体との関連性を指摘される。やがて、その事件は、加賀の母をも巡る物語へと発展していく……
読んでいて2つ思ったこと。
まず、本編の内容と直接関係がないのだけど……すっかり、加賀恭一郎シリーズという扱いが定着してしまったな、という印象。加賀恭一郎という刑事自身は、著者の作品では初期から出ているのだが、どちらかと言うと淡々と事件を解決していく、というだけ。加賀自身の過去などがあるわけではなく、犯人側の掘り下げと対をなすような存在として描かれてきた。それが『赤い指』辺りから、加賀の家族関係とか、そういうところを掘り下げるようになってきたのが印象深い。
もう1つが、著者の作品の傾向。著者の作品って、同じような時期に刊行された作品は、同じような趣向の作品が多いのだが(例えば、『手紙』と『殺人の門』、『容疑者Xの献身』と『赤い指』など)、本作もまた『夢幻花』と同じような趣向を感じられた。
それはどういうことか、というと、とにかく様々なヒントが出てくるのではあるが、それぞれがどう繋がるのかわからない。何と無く、おぼろげに形が見え隠れするものの決定打に至らない。そういう状況をもがくように進んでいって真相にいたる、という展開であること、という点。
本作にしても殺された女性が、同級生である舞台演出家とつながりがあることが早い段階で示される。ホームレスの死も何か関係があることは明らか。さらに、加賀の母を巡って現れる男も何かつながりがあるというのもわかる。しかし、どのピースがどこと繋がるのかはわからない。何と言うか、最初からパズルの大まかなピースは揃っているのに、間を埋める細かなピースがないためにどうつなげばわからないもどかしさがある。しかも、そのくせ、先に書いたような加賀の家族の話も密接に関わる、という情緒的な雰囲気が加わるために余計にもどかしさが……
まぁ、加賀の話が無かったとしても、事件の真相は悲しいの一言。マジメだった男。しかし、マジメだったからこそ、追い詰められ、面に出られなくなった。そして、マジメに娘を思ったからこそ……。その悲しさのインパクトは絶大。こちらだけでも十分に読者に訴えかける力はあるのではないだろうか?
本作を持って『新参者』以来、加賀がいた日本橋署を離れ、捜査一課へ……。また、異なった趣向になるのだろうか?

No.3408

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