(書評)私に似た人

著者:貫井徳郎

私に似た人私に似た人
(2014/04/08)
貫井徳郎

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小規模なテロ事件・小口テロが頻発するようになった日本。犯人は、社会に居場所が見つけられず、追い込まれた人々。そんな彼らは、社会への抵抗・レジスタントと自称していた。犯人に共通点はあるが、直接的な接点は存在しない。そのような時代に生きる人々を描く。
一応……連作長編なんだよなぁ……。作品のカラーとかは違うけれども、色々な人々の物語を短編の形で描く、っていうのは『愚考録』などと同じスタイル。読み終わって、これ、続けようと思えば、もっと長く続けることが出来そう、というのも含めて。
なんか、読んでいて、色々と頭をよぎるものが多い。「たまたま」生まれた年がこの年だった、ということにより、就業できず、貧困を託つ若者。その中で絶望する者。そんな若者を自己責任と見る者。逆に、上から目線の同情をする者。それぞれの物語が展開されていく。ある意味、どれを読んでいても「そうだよな」と思うところがあり、一方で偏った見方だよな、と思うところも。そういう意味で、タイトルの『私に似た人』というのは、その通りで、皆、どこかしら似ているところがあり……というような感じがする。
物語は、その「小口テロ」をした人々は、「トベ」という人物からネットで唆されていた、ということが明らかになる。しかし、トベもまた、マルチ商法のように親トベ、子トベのように関係があり、それぞれは顔見知りとは言えない。その元は……。ここは最後に明らかになるのだが、物語を結ぶ一つの線ではあっても犯人探しを主にした作品だとは思えなかった。物語の形をとって、社会的門だの部分を明らかにするのが目的の作品なのかな? と思う。
ただ……本作に関して言うと、実際に日本で起きた事件とか、そういうのをモチーフにしたのだな、と感じられ、素直に物語そのものとして楽しめていたかな? と自問自答するところも多かったり。小口テロを起こした青年の話とかは、秋葉原の連続殺傷事件に関する議論の中でひとつの「きっかけ」論として語られいていたこと。歯切れの良い答弁をするが、しかし、実際には弱者切捨て政策をする総理っていうのは、小泉氏がモデルだろうし、作中で出てくる若者擁護論、自己責任論なんていうのも数年前くらいに色々と騒がれていたそれを下敷きにしているように思えてならない(そして、そのときの論者の現在を思うと余計に……) どうも、そういうのが頭をよぎって、これは小説を読んでいるのか、それとも? という感じがしてならなかった。
しかし……正直、これまた救いの無い話だなぁ……

No.3426

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