著者:阿部真大
「若者が内にこもり、外に出なくなった」 こう言われて久しい。しかし、地方にこもる若者たち、というのは、これまでとは違う形、これまでとは新しい形を提案している存在である。岡山での調査、1980年代からの音楽から見る若者の心性。それらを通し、そのことを示した書……らしい。
本書は、現在編、過去・未来編という構成で綴られる。現在編は、著者らが岡山で行った調査に基づいて、現代の若者について語り、後半の過去・未来編ではJ-POPの歌詞などから若者の心性の変化を捉える。
のだけど……、正直なところ、読んでいて常に頭をよぎっていたのは、「どういう風に抽出したのか?」という疑問だったりする。現在編も、過去・未来編、どちらも別の部分で。
現在編は、岡山県倉敷市での著者らの行った調査に基づく。倉敷市にあるイオンの巨大ショッピングモール。そこには、岡山の各地から多くの若者が詰め掛ける。そして、その調査で見えてくるのは、「そこそこのパラダイス」としてのショッピングモール。また、「地元」を愛している、というのと、「コミュニティそのもの」とは違う、というようなこと……などなど。
ただし、その調査をした相手というのは何者なのだろう? 回答者が46名ということなのだけど、どういうサンプリングをしたのかなどがサッパリわからないのである。また、どういう調査方法(対面での調査なのか、それとも書面での調査なのか、など)なども不明。著者の専門として、社会調査論とあるのだけど、そういうのを示さずに……と感じてしまう。
過去・未来編ではJ-POPの歌詞などから各時代の若者の心性を、という。しかし、そこで語られる歌手たちは、どういう基準で抽出したのだろう? BOOWY、B’z、ミスチル、KICK THE CAN CREWなどが題材に出てくる。まぁ、それぞれの解釈は良いのだが……しかし、そのバンドが時代を代表をしている、とする根拠は何? 彼らは確かに一時代を築いた。それは事実。しかし、同時代に多くの歌手が活躍していたわけである。どういう理由で選んだのだろう。
……というか、自分の大学時代に、社会学の教授(その世界では、それなりに知られた人物)が、同じように漫画とか、そういうのを題材に時代性の変化などを綴っていたのだけど、全く納得できなかったのを思い出した(苦笑)
そして、それぞれを結びつけるのもかなり強引。
本書は、私が酷評した『ヤンキー経済』(原田曜平著)の中で紹介されていたので読んだのだが、それよりは根拠を示そうとしている。しかし、それでも、色々と強引だったり何なりで、どうにも納得しづらいものだった。
No.3432

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![]() | 地方にこもる若者たち 都会と田舎の間に出現した新しい社会 (朝日新書) (2013/06/13) 阿部真大 商品詳細を見る |
「若者が内にこもり、外に出なくなった」 こう言われて久しい。しかし、地方にこもる若者たち、というのは、これまでとは違う形、これまでとは新しい形を提案している存在である。岡山での調査、1980年代からの音楽から見る若者の心性。それらを通し、そのことを示した書……らしい。
本書は、現在編、過去・未来編という構成で綴られる。現在編は、著者らが岡山で行った調査に基づいて、現代の若者について語り、後半の過去・未来編ではJ-POPの歌詞などから若者の心性の変化を捉える。
のだけど……、正直なところ、読んでいて常に頭をよぎっていたのは、「どういう風に抽出したのか?」という疑問だったりする。現在編も、過去・未来編、どちらも別の部分で。
現在編は、岡山県倉敷市での著者らの行った調査に基づく。倉敷市にあるイオンの巨大ショッピングモール。そこには、岡山の各地から多くの若者が詰め掛ける。そして、その調査で見えてくるのは、「そこそこのパラダイス」としてのショッピングモール。また、「地元」を愛している、というのと、「コミュニティそのもの」とは違う、というようなこと……などなど。
ただし、その調査をした相手というのは何者なのだろう? 回答者が46名ということなのだけど、どういうサンプリングをしたのかなどがサッパリわからないのである。また、どういう調査方法(対面での調査なのか、それとも書面での調査なのか、など)なども不明。著者の専門として、社会調査論とあるのだけど、そういうのを示さずに……と感じてしまう。
過去・未来編ではJ-POPの歌詞などから各時代の若者の心性を、という。しかし、そこで語られる歌手たちは、どういう基準で抽出したのだろう? BOOWY、B’z、ミスチル、KICK THE CAN CREWなどが題材に出てくる。まぁ、それぞれの解釈は良いのだが……しかし、そのバンドが時代を代表をしている、とする根拠は何? 彼らは確かに一時代を築いた。それは事実。しかし、同時代に多くの歌手が活躍していたわけである。どういう理由で選んだのだろう。
……というか、自分の大学時代に、社会学の教授(その世界では、それなりに知られた人物)が、同じように漫画とか、そういうのを題材に時代性の変化などを綴っていたのだけど、全く納得できなかったのを思い出した(苦笑)
そして、それぞれを結びつけるのもかなり強引。
本書は、私が酷評した『ヤンキー経済』(原田曜平著)の中で紹介されていたので読んだのだが、それよりは根拠を示そうとしている。しかし、それでも、色々と強引だったり何なりで、どうにも納得しづらいものだった。
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