著者:北森鴻
福岡・中州の屋台でバーを営む鴨志田鉄樹(テッキ)。結婚相談所の調査員をする根岸球太(キュータ)。腐れ縁の通称「鴨ネギ」コンビが、次々と物騒な事件に遭遇する様を描いた連作短編集。
なんか、不思議な魅力がある作品集だな、というのを読んでいていてまず思った。それはひとえに、主人公コンビと周囲人物の魅力じゃないかと思う。
中州でバーを営むテッキは、物静かなタイプの人間。しかし、過去には無茶をしたこともあるし、屋台の経営自体も色々とあり、決して順風満帆とは言いがたい。そんな中で事件に関わらざるを得なくなる。一方のキュータは直情型。自分は頭脳もある、と思っているものの、女にはてんで弱い。それぞれ、別のことをもっとも大事に思いつつも、なぜか一緒に行動せざるを得なくなる。そんな二人の学生時代の恩師で、今はキュータの雇い主である結婚相談所の所長・華岡(オフクロ)。地元で知らぬものはいない、というライブハウス経営者の「歌姫」。悪徳警官。それぞれが絶妙な形で絡んでくるのが何よりも楽しい。
そして、そんな物語は、それぞれのキャラクターに対してかなりハード。例えば、3編目『夏のおでかけ』。夏になるとしばらく屋台を休業し、ある老婆の息子として振舞うテッキ。そんなテッキに会いたくて現れた女性と良い関係になりたいキュータ。両者が出会ったとき……
なぜ、テッキは、老婆の息子のような振りをしているのだろう? なぜ、オフクロは、テッキにそんなことを命じているのだろう? という謎が大きく横たわり、そこについては明るい未来が待っている。しかし、相手の女性に夢中なキュータは、その女性の問題を見逃して……。「これもまた男の試練ったい」 最後のキュータの台詞が何とも切ない。
そして、そういう作品集の最後として描かれるのが、鴨ネギコンビ、オフクロの過去とも関わる『センチメンタル・ドライバー』。学校内でも知られたワルだった二人。そんな二人とはまた、別の意味でのワルだった男。その男が、名前を変えて現れた。そして、オフクロの結婚相談所の会員となった不可解な女性……。それらが繋がった結果……
先に書いた主人公2人の性格。しかし、最終話では、それがひっくり返る。その背景にあったのは恩師への恩義。なんか、格好良すぎるぞ(笑)こう見ると、ハードボイルド系作品というのがわかる。謎解きもあるのだが、何よりもそれぞれの哲学。それが生きた作品集だと思う。
No.3434

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![]() | 親不孝通りディテクティブ (講談社文庫) (2006/08/12) 北森 鴻 商品詳細を見る |
福岡・中州の屋台でバーを営む鴨志田鉄樹(テッキ)。結婚相談所の調査員をする根岸球太(キュータ)。腐れ縁の通称「鴨ネギ」コンビが、次々と物騒な事件に遭遇する様を描いた連作短編集。
なんか、不思議な魅力がある作品集だな、というのを読んでいていてまず思った。それはひとえに、主人公コンビと周囲人物の魅力じゃないかと思う。
中州でバーを営むテッキは、物静かなタイプの人間。しかし、過去には無茶をしたこともあるし、屋台の経営自体も色々とあり、決して順風満帆とは言いがたい。そんな中で事件に関わらざるを得なくなる。一方のキュータは直情型。自分は頭脳もある、と思っているものの、女にはてんで弱い。それぞれ、別のことをもっとも大事に思いつつも、なぜか一緒に行動せざるを得なくなる。そんな二人の学生時代の恩師で、今はキュータの雇い主である結婚相談所の所長・華岡(オフクロ)。地元で知らぬものはいない、というライブハウス経営者の「歌姫」。悪徳警官。それぞれが絶妙な形で絡んでくるのが何よりも楽しい。
そして、そんな物語は、それぞれのキャラクターに対してかなりハード。例えば、3編目『夏のおでかけ』。夏になるとしばらく屋台を休業し、ある老婆の息子として振舞うテッキ。そんなテッキに会いたくて現れた女性と良い関係になりたいキュータ。両者が出会ったとき……
なぜ、テッキは、老婆の息子のような振りをしているのだろう? なぜ、オフクロは、テッキにそんなことを命じているのだろう? という謎が大きく横たわり、そこについては明るい未来が待っている。しかし、相手の女性に夢中なキュータは、その女性の問題を見逃して……。「これもまた男の試練ったい」 最後のキュータの台詞が何とも切ない。
そして、そういう作品集の最後として描かれるのが、鴨ネギコンビ、オフクロの過去とも関わる『センチメンタル・ドライバー』。学校内でも知られたワルだった二人。そんな二人とはまた、別の意味でのワルだった男。その男が、名前を変えて現れた。そして、オフクロの結婚相談所の会員となった不可解な女性……。それらが繋がった結果……
先に書いた主人公2人の性格。しかし、最終話では、それがひっくり返る。その背景にあったのは恩師への恩義。なんか、格好良すぎるぞ(笑)こう見ると、ハードボイルド系作品というのがわかる。謎解きもあるのだが、何よりもそれぞれの哲学。それが生きた作品集だと思う。
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