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(書評)ハイスピード!

著者:サイモン・カーニック
翻訳:佐藤耕士

ハイスピード! (文春文庫)ハイスピード! (文春文庫)
(2014/05/09)
サイモン カーニック

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タイラーが目覚めるとそこには、恋人の変わり果てた姿が……。失われた前日の記憶。そして、自分そっくりな男が、恋人を殺害する映像。濡れ衣を着せられて、タイラーは、不振な鞄の受け渡しをさせられることに。そして、それが激動の一日の始まりであった。なぜ自分が狙われるのか? 敵に攻撃をかわしながら、彼は反撃の機会をうかがうのだが……
『ノンストップ!』に続いて著者の作品を読むのは2作目。そちらもさることながら、本作もスピード感溢れる作風で一気に読み進めることが出来た。冒頭の、恋人の死体と寝ていた、というところから始まって、次々と仕掛けられる罠。さらに主人公・タイラーの軍人時代の同僚達も巻き込まれていく。
『ノンストップ!』の方も、スピード感があって楽しかったのだけど、こちらは物語が進むにつれて、主人公を追う殺し屋がどんどんと小物に感じられ、スケールダウンしてしまった感があった。一方、本作の場合、敵の正体が常に不明。しかも、殺された自分の恋人に対しても謎が登場してみたり……と、敵の正体というのがどんどん謎になっていく展開で当初のスピード感がなくなったとしてもそちらで引っ張ってくれるので最後まで息切れすることなく楽しむことが出来た。
物語の構図としてもなかなか考えさせられる。
イギリスの裏社会、裏稼業というところから始まって、やがて浮かび上がってくるのは、軍人はどういう存在なのか? という価値観。さらに、イギリスの抱えているアイルランド問題という爆薬庫。そういう意味で、ただ勢いで読ませる作品というだけでなく、背景などもしっかりとしていて読み応えもあった。まぁ、最終的にはかなりの逆恨みっぷりなんだけど……それは触れない方向で(笑)
前作同様のスピード感などというような娯楽性とその背景としての社会問題。どちらもしっかりとかねそろえた完成度の高い作品だと思う。

No.3489

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