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(書評)憑き物

著者:鳥飼否宇

憑き物 (講談社ノベルス)憑き物 (講談社ノベルス)
(2013/05/08)
鳥飼 否宇

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写真家・猫田夏海が訪れた岩手の寒村にある滝上家。そこでは、「イヅナサマ」の宣託を代々下すという一族がいた。その滝上家の憑依現象が行われた翌日、祈祷堂で奇妙な書置きと共に刺殺遺体が発見される……(『幽き声』)
など、3編+1編を収録した連作短編集。
著者の作品は、とんでもないバカミスも多いのだけど猫田&鳶山シリーズの本作は結構マジメな一作。ただ、前作に当たる『物の怪』と同様に、京極夏彦作品とか、三津田信三氏の「刀城言耶シリーズ」と似たような雰囲気。
例えば、冒頭に書いた『幽き声』は、夜、「イヅナサマ」の声を耳にし、宣託を下す巫女。その「イヅナサマ」とは一体、何なのか? さらに、殺人の犯人は誰なのか? 動物の生態などの薀蓄を取り入れながらの謎解き、という安定感をまず感じた。
そんな物語の雰囲気をこれでもか、と詰め込んだのは3編目の『冥き森』。奄美の作り酒屋を混乱させているというユタという巫女。酒造り一筋だったのに、性格が一変してしまった社長。そして、そのユタの儀式において起こる数々の超常現象。それらは……? 短編であるのに、数々の謎をこれでもかと詰め込んで、それをしっかりと論理的に説明する。この一冊の雰囲気の集大成のようなエピソードだと思う。
そして、最後の収録された表題作。これは、冒頭の『幽き声』の後日談的エピソード。『幽き声』で、しっかりと解決されたと思った謎。しかし、後日の関係者の行動などとあわせてみるとそれは事実ではなかった。そして、改めて明らかになる真相。1編目で軽視された部分が重要な意味を持ち、さらに、その人物の印象もがらりと変わる。
なかなか完成度の高い一作だと思う。
……ということなのだけど、考えてみると2編目だけ、他のエピソードとのつながりが少なくてちょっと浮いているかも……、とここまで書いて思った(笑) 

No.3510

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