(書評)蟻の菜園 アントガーデン

著者:柚月裕子

蟻の菜園 ―アントガーデン― (『このミス』大賞シリーズ)蟻の菜園 ―アントガーデン― (『このミス』大賞シリーズ)
(2014/08/01)
柚月 裕子

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婚活サイトを利用した連続不審死事件。その疑惑の中心人物である遠藤冬香。しかし、彼女には鉄壁のアリバイがあり、しかも、共犯者と思しき人物もいない、そんな彼女に興味を抱いたフリーライターの由美は、その生涯を探ることにするのだが……
著者の久々の長編作品。デビュー2作目の『最後の審判』から、佐方シリーズだけだったし、そういう意味では、久々にそれ以外の作品を、ということにもなる。
物語は、冬香について調べるライターである由美の視点の章。そして、「わたし」が「あなた」について語りかける章。それを繰り返すような形で展開する。
事件の中心人物とされる冬香。並外れた美貌を持ち、関わりあった男を……。それだけを見ると悪女そのものだが学生時代の証言、さらには、職場での話を聞く限り、ただ物静かなで女性に過ぎない。過度に金を使った様子もない。しかも、アリバイもある。本当に彼女が犯人なのか? そして、もし、そうならば、そうやって奪った金は何に使ったのか? 一方で、「わたし」の章では、幼い時代に酒びたりの父の下、暴力に支配されて無戸籍状態で過ごした日々からが綴られる。
事件そのものが、過去にあった事件をモチーフにしたと思われるもの。さらに、無戸籍児の問題。依存症の問題。虐待の問題……などなど、様々な社会問題を詰め込んでおり、一体、何がどうして? というところで読ませる力は十分に持っている。その点で言えば、面白く読むことが出来た。
ただし、いかんせん、分量の割に内容を詰め込みすぎている感じもする。そのため、由美の調査について、関係者である警察がポロポロと新情報を流してくれるとか、はたまた、協力を申し出た新聞記者が「ちょうど、こっちではこういう情報があったところ」となってみたりでご都合主義展開と感じてしまう部分がある。最後に判明した「わたし」の正体とかって、物語的にそんなに必要だったのかな?
佐方シリーズと比較すると、ちょっと劣るかな? とどうしても思ってしまう。単独で見れば、十分に面白いのに。

No.3546

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