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(書評)今だけのあの子

著者:芦沢央

今だけのあの子 (ミステリ・フロンティア)今だけのあの子 (ミステリ・フロンティア)
(2014/07/30)
芦沢 央

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大学時代のサークル仲間、中高生、ママ友……様々な年代にあり、日常のふとしたところから生まれたすれ違い、そして、謎。そんな物語を綴った短編集。全5編を収録。
これ、連作短編……と言っていいのかな? それぞれ、独立した話ではあるのだけど、設定とか、登場人物とかにつながりがあるといえばつながりがある。まぁ、薄いつながりのある独立した話、くらいの理解でいいのだと思うのだけど。
基本的には、ドロドロの心理描写から始まる。こういうと何だけど、女性作家らしい作品だな、というのを感じる。そして、そのドロドロなところから、そのきっかけが判明し、一気に靄が晴れるような結末。その爽やかさが、一つの持ち味なのかな? というのを感じる。
作中ですきなのは、子供を同じ絵画教室に通わせるママ友の関係を描いた『答えない子供』。同じ年の子供を持ちながらも、苦労の末に生まれた娘を大事に育てている直香。対して、若いシングルマザーで、直香には奔放というより、放任のような教育をしているソウくんママ。そのソウくんの家に行ったとき、娘は描いていた絵をなくしてしまった。そして、娘はなぜかソウくんを庇う……
ただでさえ、良い感情を抱いていないソウくんママ。その結果、娘が……と募る不満。しかし、その実態は……。第一印象とそこからこじれる関係と、事件をきっかけにする和解、という展開が綺麗で読み終わってほっとした。
同様に『正しくない言葉』も。老人ホームに住む澄江は、友人でありホーム仲間の孝子親子の間で起きたいさかいを目の当たりにする。それは、嫁が持ってきたケーキを孝子が食べずに捨ててしまった、というもの。孝子が食べなかったのはなぜか? そして、そのやり取りの中で澄江は、これまでの人生を思い起こす。短編集の最後に収録されている一編なのだが、ちょっとした言葉が足りない。ちょっとした一言で誤解が生まれ、溝のきっかけができてしまう。でも、それをはっきりとさせれば……
ドロドロとした展開にありながらも、意外と後味が良い。そんな作品集になっていると思う。

No.3553

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