著者:望月守宮
蜘蛛の裏切りにより、崩壊しつつある無貌。彼は、その最後の思いを遂げるため動き出す。その無貌に顔を奪われた仮面の探偵は、再起を求め、楽園の島へ向かう。そして、秋津の妻・遥は、彼を殺す決意を固める……
シリーズ完結編。綺麗に収まったなぁ……
「失ったモノを取り戻す」 裏表紙の粗筋ではそう書かれているし、実際、顔を、そして、本来の自分を失った探偵。愛する人を失った遥。さらに、無貌についていこうとした人々……。彼らは確かに色々と失っている。けれども、その発端、というのを考えると非常に大きな掛け違いの結果……そして、それが無貌に連なる、というのが切ない。
とにかく、これまでのシリーズの中では不敵な怪盗という印象が強かった無貌。しかし、そもそも人ならざる者である「ヒトデナシ」という存在である彼のアイデンティティは本当に、自分のものなのか? しかも、妻となった遥は、自らの言葉でヒトデナシを自由に扱うことが出来る存在。その関係は、自らのものなのか? それとも……。そこから始まったわけだから。そして、自らの最期を悟っての旅路と、それを巡る人々の思惑がやはりすれ違っていく。これまでと違って全体的に悲壮感溢れる雰囲気が印象的だった。
そして、その結末は……。ある意味、それぞれが思いを遂げた、といえるし、でも、悲劇的ともいえるし……。そんな感じが残る。なんか、私のような語彙の少ない人間には上手く表現できない。
そんな中で、シリーズを通しての感想を言うと、無貌じゃないけど、凄く多くの顔を持った作品だったな、と感じる。怪盗と探偵という形で始まり、ヒトデナシの幻想的な世界を見せてくれ、細かな連作短編の味わいを見せてくれ、そして、無貌自身の存在感。それらが次々と現れるのが魅力的だった。残念ながら、刊行ペースがあまり速くないので多少、前のエピソードがどうだったっけ? とか思うことがあったのがもったいないが、それは作品の弱点ではないし。むしろ、これから読むなら素直にお勧めしたい。
面白かった。
No.3590

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![]() | 無貌伝 ~最後の物語~ (講談社ノベルス) (2014/11/06) 望月 守宮 商品詳細を見る |
蜘蛛の裏切りにより、崩壊しつつある無貌。彼は、その最後の思いを遂げるため動き出す。その無貌に顔を奪われた仮面の探偵は、再起を求め、楽園の島へ向かう。そして、秋津の妻・遥は、彼を殺す決意を固める……
シリーズ完結編。綺麗に収まったなぁ……
「失ったモノを取り戻す」 裏表紙の粗筋ではそう書かれているし、実際、顔を、そして、本来の自分を失った探偵。愛する人を失った遥。さらに、無貌についていこうとした人々……。彼らは確かに色々と失っている。けれども、その発端、というのを考えると非常に大きな掛け違いの結果……そして、それが無貌に連なる、というのが切ない。
とにかく、これまでのシリーズの中では不敵な怪盗という印象が強かった無貌。しかし、そもそも人ならざる者である「ヒトデナシ」という存在である彼のアイデンティティは本当に、自分のものなのか? しかも、妻となった遥は、自らの言葉でヒトデナシを自由に扱うことが出来る存在。その関係は、自らのものなのか? それとも……。そこから始まったわけだから。そして、自らの最期を悟っての旅路と、それを巡る人々の思惑がやはりすれ違っていく。これまでと違って全体的に悲壮感溢れる雰囲気が印象的だった。
そして、その結末は……。ある意味、それぞれが思いを遂げた、といえるし、でも、悲劇的ともいえるし……。そんな感じが残る。なんか、私のような語彙の少ない人間には上手く表現できない。
そんな中で、シリーズを通しての感想を言うと、無貌じゃないけど、凄く多くの顔を持った作品だったな、と感じる。怪盗と探偵という形で始まり、ヒトデナシの幻想的な世界を見せてくれ、細かな連作短編の味わいを見せてくれ、そして、無貌自身の存在感。それらが次々と現れるのが魅力的だった。残念ながら、刊行ペースがあまり速くないので多少、前のエピソードがどうだったっけ? とか思うことがあったのがもったいないが、それは作品の弱点ではないし。むしろ、これから読むなら素直にお勧めしたい。
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