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(書評)放課後アポカリプス

著者:杉井光


放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)放課後アポカリプス (ダッシュエックス文庫)
(2014/11/21)
杉井 光

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入学時に躓き、授業を休んでばかりであった僕は、久しぶりに顔を出したHRの直後、あの『ゲーム』に巻き込まれた。全校生徒ごと荒野の真ん中に転送された校舎。強力な破壊兵器と、強靭な肉体を与えられた僕らの前に現れるのは異形の生物「天使」。それを全滅させなければ日常へと戻れない。そんなゲームが週に1回、必ず行われる。1年B組の「司令官」にされていた僕は、普段、僕を軽んじるクラスメイトたちを率いて、その「ゲーム」に参加することになるのだが……
ダッシュエックス文庫の創刊ラインナップの1冊となる本作。読んでいて思ったのは、「そういえば、著者は、時々、こういうダークさ溢れる作品を書くんだった!」ということだったり。道中はともかく、結末では明るい雰囲気のある『神様のメモ帳』とか、『さよならピアノソナタ』、『楽聖少女』なんて作品が有名な著者だけど、その中にあるダークな部分を凝縮したような作品があるのは頭にある。私が読んだ作品だと『死図眼のイタカ』とか、むっちゃ、ダークだったしなぁ……
物語の概要は、冒頭に書いたとおり。週に1回、必ず参加させられるゲーム。そこで傷ついても次の回には回復してる。そして、司令官だけは、ゲーム時の記憶があり(他の生徒は、記憶がない)、他の生徒達をゲーム中に犠牲にすることすら出来る。そのような中、僕は、イレギュラーとしての部分があるらしい……
ある意味、デスゲーム作品としてのお約束をそろえた部分があるといえる。ただし、本作が上手いのは、情報の出し方。ゲーム中に「死んだ」人間が、だんだんと存在意義を失ってしまうことを自覚するのが「僕」だけ。さらに、そもそもの「ゲーム」のルールも手探り状態。設定そのものより、その見せ方によって上手く引き込まれた感がある。
さらに、その中での日常描写がかなり嫌な感じ。そもそもの主人公が、クラスでは浮いた存在、というのはあるのだけど、同じように司令官にされた別クラスの人間の鬱憤の溜まった様子とか、かなりはっちゃけているし。その存在に嫌悪感を覚えつつも、しかし、ゲームに勝たねば日常へ戻れない、と言う中で一種の合理性も感じさせる。この辺のバランス感覚も含めて上手いな、と感じた。
終盤でのひっくり返し。それ自体は、予測できるかもしれない。でも、ゲームそのものはまだ続く。
そんなに長いシリーズにはならないようい思う。でも、色々と明らかにしつつ、しかし、その後への謎を引っ張る。上手い1巻だと思う。

No.3592

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