著者:貫井徳郎
5歳で伯父夫婦に引き取られ、そのラーメン屋を手伝いながら育った峰岸晄。母は死に、父は人殺し。学校では、イジメに遭い、それに抵抗することすら面倒くさい。そして、そんな彼はやがて、裏社会とのつながりを持つようになり……
「驚愕のラスト」と言う、ある意味、著者の作品の内容紹介ではお馴染みの台詞。確かに衝撃的なラスト。ただ、『慟哭』のような切れ味のあるひっくり返し、というわけでもなく、かといって『灰色の虹』のような残酷すぎるラストシーンの構成があるわけでもない。あくまでも淡々と、しかし、だから「切ない」という感想が浮かんでくる。
主人公の晄は、冒頭に書いたような背景、過去を持っている人物である。しかし、物語は既に伯父の家に引き取られた後の14歳から始まり、16歳、19歳、21歳、25歳、29歳という年齢での出来事を描きつつ、その中で過去のことにも触れる、というような構成を取っている。
14歳の晄は、完全にイジメの標的。毎日のように机に嫌がらせがされ、さらに不良連中からは万引きをするよう強要される。そしてそれに抵抗するわけでもなく、淡々と受け入れるだけ。16歳になると状況は似たような部分がありつつも、そこに強かさが見え隠れし始める。そして、19歳、高校を卒業した彼は、闇金の取立て屋になり、成人した後は、犯罪行為すら行うように……
地味ではあるが、強かに、そして、計画的に物事を進める晄。もし、環境がこうでなければ全く明るい道を進むことができたのではないかと思わせるだけの頭脳の冴えと大胆さ。そして、その中で晄の行動は少しずつ何か大きな目的が見え隠れしていく。
何となく、このあたりだろう、という目的は想像できる。そして、どちらかと言うと、真相を知ったときの感想は「えっ!?」と言うよりも「やっぱり」という部分がある。けれども、それ以外になかった、というのが切なくさせる。常に晄を気遣ってくれた幼馴染の少女や、復讐に協力をしてくれた日野。こういった人物達の好意も届かなかったのは……
真相がわかることでスッキリとか、唖然とかではなく、真相がわかることでよりじわじわと切なく感じられる。そんな作品だと思う。
No.3644

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![]() | 我が心の底の光 (2015/01/21) 貫井 徳郎 商品詳細を見る |
5歳で伯父夫婦に引き取られ、そのラーメン屋を手伝いながら育った峰岸晄。母は死に、父は人殺し。学校では、イジメに遭い、それに抵抗することすら面倒くさい。そして、そんな彼はやがて、裏社会とのつながりを持つようになり……
「驚愕のラスト」と言う、ある意味、著者の作品の内容紹介ではお馴染みの台詞。確かに衝撃的なラスト。ただ、『慟哭』のような切れ味のあるひっくり返し、というわけでもなく、かといって『灰色の虹』のような残酷すぎるラストシーンの構成があるわけでもない。あくまでも淡々と、しかし、だから「切ない」という感想が浮かんでくる。
主人公の晄は、冒頭に書いたような背景、過去を持っている人物である。しかし、物語は既に伯父の家に引き取られた後の14歳から始まり、16歳、19歳、21歳、25歳、29歳という年齢での出来事を描きつつ、その中で過去のことにも触れる、というような構成を取っている。
14歳の晄は、完全にイジメの標的。毎日のように机に嫌がらせがされ、さらに不良連中からは万引きをするよう強要される。そしてそれに抵抗するわけでもなく、淡々と受け入れるだけ。16歳になると状況は似たような部分がありつつも、そこに強かさが見え隠れし始める。そして、19歳、高校を卒業した彼は、闇金の取立て屋になり、成人した後は、犯罪行為すら行うように……
地味ではあるが、強かに、そして、計画的に物事を進める晄。もし、環境がこうでなければ全く明るい道を進むことができたのではないかと思わせるだけの頭脳の冴えと大胆さ。そして、その中で晄の行動は少しずつ何か大きな目的が見え隠れしていく。
何となく、このあたりだろう、という目的は想像できる。そして、どちらかと言うと、真相を知ったときの感想は「えっ!?」と言うよりも「やっぱり」という部分がある。けれども、それ以外になかった、というのが切なくさせる。常に晄を気遣ってくれた幼馴染の少女や、復讐に協力をしてくれた日野。こういった人物達の好意も届かなかったのは……
真相がわかることでスッキリとか、唖然とかではなく、真相がわかることでよりじわじわと切なく感じられる。そんな作品だと思う。
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