著者:桜庭一樹
竹から生まれた吸血種族バンブー。固い掟を守り、ひっそりと暮らす彼らと、人間の友情物語。全3編を収録した連作短編集……ともちょっと違うか……
著者の作品は、独特の世界観を作り上げてしまう、というものがしばしばあるのだけど、本作はまさにそんな家事。先に書いたように、バンブーは竹から生まれた吸血種族。日本にいるが、元は中国からやってきた存在。バンブーは2種類おり、生まれながらのバンブーと人間からバンブーになった存在。バンブーは見た目の姿は変わらない。しかし、120年くらいで竹が突如、花を咲かせて枯れるように、彼らも消えてしまう。
そのような彼らと人間の物語。
1編目は、本書の6割近くを占める物語。
ボスの女に手を出した、として、一家が皆殺しにされようとしているとき、ムスタァ、洋治という二人のバンブーに拾われた梗。ムスタァたちのことが大好きな梗と、梗のことが大好きなムスタァたち。本来、交わることのない両者が出会い、つつましいながらも楽しいときを過ごし始める。しかし、梗のことが大好きだからこそ、ムスタァは別れようと思うのだが、それを梗は理解できず……。交わる存在ではないはずの存在が交わってしまったからこその行き違い。分量も最も多く割かれているだけに、その切なさが強く出てくるように感じた。
そして、やってきた別れ。大切なはずだったムスタァたちだったが、日々に追われ、だんだんと意識から消えることも……。あんなに大切な存在だったのに……。でも、それがムスタァたちが言う「生きている」ことの証。そんな中、年月が経過し、梗の命の火が消えようとしたとき、梗はムスタァたちと過ごした故郷の町へと戻り……
生きているからこそ、大切なものも変わり、忘れていく。けれども、決して完全に忘れるわけではない。ちゃんと残るものも沢山ある。そんなメッセージを強く感じることが出来た。
その1編目で梗が出会ったはぐれバンブー・茉莉花を描く2編目。現在、日本にいるバンブーたちが中国から日本へやってくる顛末を描いた3編目。それらも良かったのだけど……やっぱり、1編目の印象が飛びぬけて強いと思う。
No.3645

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![]() | ほんとうの花を見せにきた (2014/09/26) 桜庭 一樹 商品詳細を見る |
竹から生まれた吸血種族バンブー。固い掟を守り、ひっそりと暮らす彼らと、人間の友情物語。全3編を収録した連作短編集……ともちょっと違うか……
著者の作品は、独特の世界観を作り上げてしまう、というものがしばしばあるのだけど、本作はまさにそんな家事。先に書いたように、バンブーは竹から生まれた吸血種族。日本にいるが、元は中国からやってきた存在。バンブーは2種類おり、生まれながらのバンブーと人間からバンブーになった存在。バンブーは見た目の姿は変わらない。しかし、120年くらいで竹が突如、花を咲かせて枯れるように、彼らも消えてしまう。
そのような彼らと人間の物語。
1編目は、本書の6割近くを占める物語。
ボスの女に手を出した、として、一家が皆殺しにされようとしているとき、ムスタァ、洋治という二人のバンブーに拾われた梗。ムスタァたちのことが大好きな梗と、梗のことが大好きなムスタァたち。本来、交わることのない両者が出会い、つつましいながらも楽しいときを過ごし始める。しかし、梗のことが大好きだからこそ、ムスタァは別れようと思うのだが、それを梗は理解できず……。交わる存在ではないはずの存在が交わってしまったからこその行き違い。分量も最も多く割かれているだけに、その切なさが強く出てくるように感じた。
そして、やってきた別れ。大切なはずだったムスタァたちだったが、日々に追われ、だんだんと意識から消えることも……。あんなに大切な存在だったのに……。でも、それがムスタァたちが言う「生きている」ことの証。そんな中、年月が経過し、梗の命の火が消えようとしたとき、梗はムスタァたちと過ごした故郷の町へと戻り……
生きているからこそ、大切なものも変わり、忘れていく。けれども、決して完全に忘れるわけではない。ちゃんと残るものも沢山ある。そんなメッセージを強く感じることが出来た。
その1編目で梗が出会ったはぐれバンブー・茉莉花を描く2編目。現在、日本にいるバンブーたちが中国から日本へやってくる顛末を描いた3編目。それらも良かったのだけど……やっぱり、1編目の印象が飛びぬけて強いと思う。
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