(書評)屍者の帝国

著者:伊藤計劃、円城塔


屍者の帝国 (河出文庫)屍者の帝国 (河出文庫)
(2014/11/06)
伊藤 計劃、円城 塔 他

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死体を改造し、労働力とする「屍者」化の技術が全世界へと拡大した19世紀末。英国、ロンドン大学に通う学生ジョン・ワトソンは、諜報員としてアフガニスタンへと潜入する。そこで待ち受けていた「屍者の国」の王カラマーゾフから依頼を受け、「ヴィクターの手記」、最初の屍者ザ・ワンを追うことになる……
生前、伊藤計劃氏が残したプロットと試し書きの内容を骨格として、円城塔氏が小説として完成させた作品。テレビCMとかでもいわれているから、言うまでもないことかも知れないけれども(笑)
SF大賞受賞作であるのだけど、歴史上の過去を舞台にしている、というのがまず面白い試みだな、と感じる。物語は、第2次アフガニスタン戦争時代のアフガニスタン。明治政府が出来上がったばかりの日本。南北戦争終結後のアメリカを舞台として展開する。人間の死体を基にしているとは言え、人間ではない存在となった「屍者」。人間の命令に忠実に従い、人間よりも高い身体能力を持つ存在。そして、それは労働力として使われるだけでなく、戦場では強力な戦力となり、はたまた爆薬を身につけて純粋な兵器としても利用される。そのような便利な存在であるが故に、多く作られ、「死体不足」という状況も起きている。そのため、南米などでは、人間を死なせ、死体を輸出することも一つの産業に……。勿論、実在人物が出る、というのはあるのだけど、あくまでも架空の歴史の話なのに実際の歴史のように感じられてくる。
その上でのテーマは、人間の意識、意思とは一体何なのか? 屍者と人間は、物質として同じはず。しかし、人間には意識があり、屍者にはない。それは人間だけが持っているからか? しかし、最初の屍者であるザ・ワンにはあったという。と、なると……? 科学とか、そういうものも大きく発達し始めた時代を舞台にしているからこそ、余計にそれを感じさせる、というのも、先ほどの歴史上の時代を使った意味があるのだろう。
100%、全てを味わい尽くせたかは疑問。でも、それでも色々と考えさせられ、そして、楽しく読むことが出来た。

No.3668

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  •  屍者の帝国/伊藤計劃×円城塔
  • 伊藤計劃さんの残したプロットを元に、円城塔さんが書き上げた「屍者の帝国」を読み終えました。 時はヴィクトリア朝時代。その世界の歴史は、私たちの知っている歴史とは違い、フランケンシュタイン博士の手によって、死者を蘇られる技術が日常的なものとして使われています。そんな世界を舞台に、主人公となったのはシャーロック・ホームズの語り手として有名なワトソン博士です。お話はまだワトソンがホームズと出...
  • 2015.04.13 (Mon) 21:27 | 日々の記録