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(書評)星読島に星は流れた

著者:久住四季


星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)星読島に星は流れた (ミステリ・フロンティア)
(2015/03/23)
久住 四季

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天文学者であるサラ・ディライト・ローウェル博士は、自分の住む孤島で毎年、天体観測の集いを開催している。ネット上のフォーラムで希望者を集い、その中から招待される者が決まる。その確率は、数千倍にも上るという。なぜならば、その観測会の最中、何度も隕石が落ちる、という奇跡が起きているため。亡くなった妻子の趣味であった天体観測からフォーラムを見ていて、とりあえずの参加希望を出しただけの医師・加藤盤はその観測の集いに招待され……
いや~……久々の著者の作品。調べてみたら実に5年ぶりだったことを発見。
これまでの作品は電撃文庫から、ということで、どうしてもキャラクターの掛け合いとか、そういうところを重視せざるを得ない部分があったのだろうが、本作は一般レーベルからの刊行ということもあり、そういう縛りから解き放たれているように感じる。
米澤穂信氏が帯に書いているのだけど、実に魅力的な舞台設定。これが、この作品の何よりもの長所だと思う。年に6000個くらいは地上に落ちるという隕石。しかし、そうは言っても、同じ場所にというのはなかなか起きるものではない。しかし、星読島には数年に一度という高い頻度で隕石が落ちるという。なぜ、その島にだけ何度も? さらに主催者であるローウェル博士は、隕石が落ちてきた場合、その隕石を参加者の誰かに無料で渡すという。グラム2ドル、とも言われるそれは、まさに宝そのもの。それを巡っての思惑というのも交錯する。
その上で、電撃文庫などで描いていたらしくキャラクターも魅力的。ちょっとツンデレキャラ的な美宙はちょっとテンプレに思ったけど、妙にアクティヴな無職のデイヴ。「明日、地球が滅びるとしたら何をするか?」と尋ねる主催者のローウェル博士。それらが物語を彩る。その上で、参加者が殺され、実際に落ちた隕石が消える。犯人は奪った? でもチグハグ……という事件が起きるのだけど、事件が起きるまで、これでもかと魅力的な舞台設定が描かれるため、そこに引きずられる形でどんどん読み進めることが出来た。
トリックとか、そのあたりはやや小粒ではある。でも、しっかりと論理的に解決し読後感も良い。面白かった。

No.3678

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