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(書評)明日の子供たち

著者:有川浩


明日の子供たち明日の子供たち
(2014/08/08)
有川 浩

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児童養護施設へと転職した元営業マンの三田村。やる気はあるが、専門知識などはまだまだサッパリ。愛想はないが、涙脆い和泉先生や、理論派の猪俣、さらには様々な子供たちとの中での日々を描く……
なんか、自分で書いていて、何とも言えないような内容紹介の文章になってしまった(苦笑) ただ、Amazonとかの内容紹介にあるような「ドラマティック長編」という感じでもないんだもの。
物語は、先にも書いたように児童養護施設を舞台に、そこでの出来事などを描いた作品。微妙に著者らしい恋愛とかも匂わせているけど、どちらかというと「児童養護施設とは一体何なのか?」といような部分に焦点を当てた作品のように感じる。
「児童養護施設」というと、何らかの理由で親と暮らすことができない子供たちが集められ生活する場。そこまでは知っている。けれども、中身について、そこで子供たちは、職員はどういう生活をしているのか? そんなことが綴られる。
テレビなどで描かれる場合、そこの子供たちというのは「かわいそうな存在」と言われる。しかし、本人たちは決してそうだと言うわけではない。確かに、普通の家庭の子供と比べれば選択肢は少ないかもしれない。けれども、そもそもそれが望めないからそこにいる。しかも、元の家庭よりも良い環境のことだってある。にも関わらず、「かわいそう」というのは彼らに対して失礼。しかし、一方で、普通の家庭では頼ることのできる家族などがいないため、進学などの幅が狭くなる、なんていうこともある。そんな現実もしっかりと綴られる。著者らしい明るいトーンの日常と、そこにしっかりと入るそういう指摘のバランスが非常に良いな、と思う。
これを読むと、児童養護施設が、そこの子供がどういう存在なのか、というのが理解できる。
……と書きたいのだけど、これまた、恐らくは違うのだろう。いや、本作の内容が間違っている、とか、そういう意味ではなくて、これを読んだからといって「理解できた」と思うことが、先に書いた「かわいそうと決めつけるのが失礼」というのと同じで「これで理解できたと思うのも傲慢」という風に感じる。まぁ、いくら相手を理解しようとしたところで結局は他人は他人で、完全に理解できることはない、というのと同じで。
物語の展開としては、決して突飛なものではなく、また、こうなるのだろう、という流れの中で収束していく部分が強い。ただ、その中で児童養護施設というのがどういう場所なのか、というのを考えるきっかけになる作品ではあると思う。美化することも、逆に過剰に過酷ということもしないフラットな描写がされているから余計に。
ただ、個人的に残念だったのは、梨田先生が終始、悪役的な立ち位置になってしまっていたこと。確かに、保守的とか、そういうところはある。でも、猪俣先生のエピソードとかであったように決して全てが間違っているわけでもない。梨田先生の視点のエピソードとか、そういうところもあればより良かったなぁ、というも思う。

No.3680

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