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(書評)南青山骨董通り探偵社

著者:五十嵐貴久



憧れの大企業に就職したものの、慣れない営業職に塞ぐ日々を送る雅也。そんなある日、彼の前に現れた男・金城は問う。「探偵になる気はありませんか?」 いぶかしみながらも体験入社するが、厄介ごとの依頼が舞い込んで……
現在、著者は同じくいきなり文庫化されている「吉祥寺探偵物語」シリーズがあるわけだが、結構、カラーが異なっているな、というのが最初の感想。「吉祥寺探偵物語」よりも真面目、という感じ。
体験入社という形で南青山骨董通り探偵社に入った雅也。そこに入った依頼は、名門私立中学の生徒が、複数の男性と関係を持ち、なおかつ小さな子供に性的悪戯をしているらしい、という告発メールの真偽を探ること。その中で、確かに疑わしい部分は見出されるのだが、そんな調査の中、その私立校の教師が強姦魔という疑いが浮かび上がり、しかし、その容疑者として探偵社のメンバーの一人が拘留されてしまう……
「吉祥寺」の場合、探偵と言っても、あくまでも素人でモグリである川庄が一人でやるわけだけど、こちらは、かなり個性的なメンバーが揃って、それぞれの特技を駆使してのチーム戦。ネットの専門家、元刑事、キャバクラ嬢、女子プロレスラー……などなど、色々な職業の人が集まってやっていく展開はなかなか楽しい。
まぁ、正直なところ、推理というような感じではないし、また、皆の能力が高すぎないか? と思わないでもない。特に金城さんの人脈が異常な感じだし。その中で、ある意味、一番普通な雅也って、バランサー的な存在なのかもしれない。どちらかと言うと、記録者的な立ち位置になっているように感じた。
その上で、本作のメッセージっていうのは、職場の価値、居場所みたいなものなのかな? というのを思う。安定した大企業で、高い給与も約束してくれるが大事にしてくれない会社。そして、将来性などは不明だが、自分を仲間として認めてくれる会社。「人は石垣。人は城」という武田信玄の言葉(とされているもの)があるが、そういう関係が今後の成長へ……となるのかな?
第2作も出ているので、それを期待しよう。

No.3743

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  • 2015.08.27 (Thu) 23:13 | 刹那的虹色世界