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(書評)ネット私刑

著者:安田浩一



インターネットで犯罪加害者や、関係者の個人情報が晒され、そして、その真偽に関係なく拡散されていく。それを「ネット私刑(リンチ)」と呼ぶ。大津でのイジメ自殺事件、最近では川崎市の中学生殺害事件など……。「正義」を大義名分として行われるそれについて、迫った書。
うーん……色々と「なるほど!」と思わされるところはあるのだけど、何か論点がぼやけているようにも感じられる。そんな読後感。
「ネット私刑」がどのような形で行われるのか。その経緯はどういうものだったのか。それについてはしっかりと抑えられていると思う。川崎市の中学生殺人事件での、加害者探しの経緯であるとか、はたまた、大津市のイジメ自殺事件において無関係なのに加害者の親として扱われてしまった女性の、そこに至る経緯。さらに、殺人犯扱いされてしまったコメディアン・スマイリーキクチ氏の事例……。分量はコンパクトながら、時系列での説明。さらに、その中での警察の対応のような司法の側の問題などまで網羅されている。また、逆に、そのような「ネット私刑」をした人間のケースなども含まれており(これが全て、とは言えないのだろうが)、その概要について知る、という点では十分に意味を果たしていると感じる。
実際、職場にまで誹謗中傷の電話が掛かってきて、それこそ、仕事などにも支障を来たすようになったのに、警察はまともに取り合ってくれない、とか、そういう恐怖、というのは想像するだけでも恐ろしい。勿論、実際の被害者は……となるだろう。
そういう意味で、読み応えはある。
あるのだけど……最初に「論点がぼやけている」という風に書いたのは、著者が「在特会」とか、「ヘイトスピーチ」とか、そういう問題を多く扱っていることもあるのだろうが、その話の分量がやたらと多い点。
いや、この問題が、「ネット私刑」と結びついているのは事実だろう。私は『2ちゃんねる』とか、まとめサイトとかは全く見ないが、Yahoo! とか、mixiとかの事件報道へのコメント欄などでも「犯人は在日だ」みたいなものが多くある。個人的な話で言えば、なぜか私のブログにも「お前は在日だろ」というコメントが来たことがある(しかも、国語力すらも怪しいコメントが) こんな泡沫ブログにすら沸いて来るのだから、確かに大きく影響しているのだろう、と思う。また、著者が多く扱っている題材が、ヘイトスピーチとかそういうものであるから、それ絡みの話が多く入るのも理解できる。しかし、重なる部分が多かろうと「ネット私刑」の問題とは別物のはずである。本書で扱われる殆どの話が、その話題絡みになってしまうと「どっちがメインなの?」という感じになってしまう。
考えさせる内容であることは確かだが、しかし、もうちょっと事例を豊富にしても良かったように思う。

No.3788

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