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(書評)祟り婿 古道具屋皆塵堂

著者:輪渡颯介



曰く品ばかりの皆塵堂にやってきた新たな奉公人・連助。しかし、彼は幽霊や呪いといった類の話は一切信じない。それどころか、そのような話をする人間を馬鹿にすらしてしまう。そんな皆塵堂のところへ質屋から入った話は、質草をしまっている蔵から奇妙な音がする、というもの。連助は店主である伊平次らと共に、その質屋に泊り込みに行くのだが……
シリーズ第5作。
最初のエピソードで明かされるのでネタバレしてしまうのだけど、なぜ、そこまで連助が幽霊やら呪いやらを敵視するのか。それは、自分がある家へと婿入りすることが決まっているから。そして、その家に婿に入った者は、皆早死にしてしまうから。だからこそ、そんなのはただの迷信である、ということを証明したい、と考える……
そして、伊平次らは、本当は幽霊の仕業であっても、連助に幽霊を見せないよう工作する。そんなものはない、という確信を持てるように。ところが、自ら「幽霊などいない」と証明しようと思うが故に、どんどんそちらへと近づいて……騒動になってしまう、というわけ。連助に幽霊を「見せないようにする」っていうのは、ちょっと前に読んだ『ばけたま長屋』の逆パターンであり、どっちも大変だなぁ、というのはよくわかった(笑)
今回は、1作目の主人公である太一郎と、連助の対比が面白い。
連助からすれば「見える」という太一郎は、馬鹿な話を広める悪人。それをどうにしかしてやりたい、と思う。対して、本当に「見える」立場であり、見えないように勤めている太一郎からすれば、守ってやっているのに自分を馬鹿にしてくる嫌な奴。太一郎が、「あとで思い切り怖い目を見せてやる」ってある意味、キャラが崩壊しているし。連助のほうも、威勢はいいけど、喧嘩っぱやいのに喧嘩にはとことん弱い、というある意味、正反対でしかし、似た者同士のやりとりが楽しかった。
で、その元凶とも言うべき、連助の婿入り先の怪異。これ、多分、過去のシリーズでも最も凶悪なものだと思う。主の家に女児しか生まれなくする。婿は早死にする。さらに……。それを止めようとする者にも危害を加えてくるそれを止めるための手段……。過去のシリーズのキャラクターをしっかりと使って、やっぱりちょっと間の抜けた解決策に持っていくのは著者ならでは。
本作も安定して、そして、楽しく読むことが出来た。

No.3791

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