(書評)誰かの家

著者:三津田信三



全6編の怪奇小説を収録した短編集。
著者の作品というと、刀城言哉シリーズなどが代表するように、怪異などを題材としつつ、しかし、それは本当なのか? それとも? という一種の謎解き要素を伴うものが多い。勿論、怪異が本当だとしても、それはそれとして謎が存在する、というのが恒例。そんな中、本作はそのような謎というタイプではなく、純粋に怪異が、という物語となっている。そして、謎があっても、それが解明されないものも多い。
例えば1編目の『つれていくもの』。高校のとき、バイトを繰り返し手に入れた念願のバイク。その喜びで、季節はずれの海まで遠乗りし、そこで少年は1人の女性と出会う……。作中作的な怪談話として語られるそれは、ちょっと奇妙だけど、怖いのか? といわれると、これまた微妙。そのまま読めば、旅先で出会った女性に誘われたのを断っただけ……と取れるだけに……。しかし、深読みすると違和感……そんなエピソード。
謎解き要素という意味では4編目の『湯治場の客』。体調不良で、山中の湯治場へと行った主人公。そこで、彼は同じく湯治に来ていた女性・紘子と出会う。しかし、一人で湯治に来ていたはずの紘子の周囲では、なぜか男の声が聞こえるように思えて……
一人で来ているはずなのに、男の声が聞こえるのはなぜか? そんな中、紘子の抱えた事情なども明かされ、その事情についての仮説も出来上がる。しかし……それで……? 怪異の芽が出て……そのまま……。その点でも、この作品集らしい一作かも。
一番怖いのは6編目である表題作。
喧嘩やら何やらをしていた不良少年の主人公。家出をし、金に困った彼に、彼ですら嫌と感じる不良少年のカメイは、ある屋敷へ盗みに入ることを提案する。その屋敷は、人里離れたところにあるのだが、誰も出入りした形跡がないという。そして、そこに入った少年を襲う奇妙な出来事……
こちらも一応、「こうじゃないか?」という推測は成立している。しかし、あくまでも少年の推測でしかなく、穴だらけ。だからこその嫌な余韻が残る。

No.3798

にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村



スポンサーサイト

COMMENT 0