著者:貫井徳郎
モデル:藤原一裕


二日酔いで目覚めた朝、ベッドの横の床には死体があった。……見覚えのない女の……。おれが殺すわけがない。知らない女だ。では、誰が殺したのか? マンションの部屋は密室状態で、おれと女の二人きり……
ダ・ヴィンチ・ビジュアルブックシリーズとして刊行され、藤原一裕氏の写真を多く取り込みながら物語が展開する、という構図の作品。とりあえず、本としての評価、というのは後で語るとして、物語だけでの評価から。
とりあえず、まず思ったのが著者の作品としてはライトだな、ということ。まぁ、実質的な分量で言うと、普通の文庫本で70頁とか、そのくらいの分量なのでそこまで重い物語に持っていくのも難しいのかも知れないが。
物語は、朝、自分の部屋で、他殺と思われる形で死んだ女性を探り、数少ない手がかりである手帖に書かれていた名前から、したいとなっていた女性の知人に当たり、さらに前日、飲んでいたと思しきバーの店員に当たり……で情報を得ていく、という展開。その中で、ある程度の情報は得られていくのだが、決定打は出ない。その一方で……
女が何者なのか? その情報を得ていく中で己自身を……。そういう物語自体は決して珍しいわけではない。しかし、本作の特殊なところは、主人公についての情報というのが意外と少ない、というところにあるのだろう。確かに、自分はどこで働いている人間であって……というのを自分で紹介する、というのはないだろう。それは自明のことだから。まして、自分がこのままでは殺人犯にされてしまう……という状況でわざわざそんなことをするわけがない。そういう意味では自然なのだけど、物語のポイントとなっている、というのは良いのかどうか……。また、主人公の性格とかそういうものについて、他人の言葉で「お前ってこうだよな」と言われるだけで、実際、読者がそういう風に感じる描写が少ないのはちょっとマイナスかな? とも思う。
分量の制約とか、そういうものがある中、リーダビリティの高い文章と、それでもしっかりとまとめた、という点は流石なのだろう。
で、最初に書いた本そのものの企画について。実は、この感想を書くにあたって他の方の感想とかを見たのだけど、かなり厳しい。「写真、邪魔!」みたいな意見が多かったし。個人的には、この作品って、作中にしばしばイラストが入るライトノベルレーベルの作品のイラストを写真に置き換えたものだと思っている。その意味で、写真があること自体はそれほど気にならなかった。ただ、いかんせん、頁数の4分の1以上が丸々写真(他に頁の半分が写真ということも多い)というのは多すぎる感じだし、イメージ写真ってあまり多すぎると帰ってイメージを阻害するな、というのを感じずにはいられなかった。その意味で、写真と物語のバランス。そういうものに工夫が必要かな? というのを思わずにはいられなかった。
ただ……分量の制約と書いたけど、カラー写真をコレだけ入れるとなると、長編の分量があるのではとんでもない値段になるので、そういう意味でも難しいのだろうな……
No.3800

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二日酔いで目覚めた朝、ベッドの横の床には死体があった。……見覚えのない女の……。おれが殺すわけがない。知らない女だ。では、誰が殺したのか? マンションの部屋は密室状態で、おれと女の二人きり……
ダ・ヴィンチ・ビジュアルブックシリーズとして刊行され、藤原一裕氏の写真を多く取り込みながら物語が展開する、という構図の作品。とりあえず、本としての評価、というのは後で語るとして、物語だけでの評価から。
とりあえず、まず思ったのが著者の作品としてはライトだな、ということ。まぁ、実質的な分量で言うと、普通の文庫本で70頁とか、そのくらいの分量なのでそこまで重い物語に持っていくのも難しいのかも知れないが。
物語は、朝、自分の部屋で、他殺と思われる形で死んだ女性を探り、数少ない手がかりである手帖に書かれていた名前から、したいとなっていた女性の知人に当たり、さらに前日、飲んでいたと思しきバーの店員に当たり……で情報を得ていく、という展開。その中で、ある程度の情報は得られていくのだが、決定打は出ない。その一方で……
女が何者なのか? その情報を得ていく中で己自身を……。そういう物語自体は決して珍しいわけではない。しかし、本作の特殊なところは、主人公についての情報というのが意外と少ない、というところにあるのだろう。確かに、自分はどこで働いている人間であって……というのを自分で紹介する、というのはないだろう。それは自明のことだから。まして、自分がこのままでは殺人犯にされてしまう……という状況でわざわざそんなことをするわけがない。そういう意味では自然なのだけど、物語のポイントとなっている、というのは良いのかどうか……。また、主人公の性格とかそういうものについて、他人の言葉で「お前ってこうだよな」と言われるだけで、実際、読者がそういう風に感じる描写が少ないのはちょっとマイナスかな? とも思う。
分量の制約とか、そういうものがある中、リーダビリティの高い文章と、それでもしっかりとまとめた、という点は流石なのだろう。
で、最初に書いた本そのものの企画について。実は、この感想を書くにあたって他の方の感想とかを見たのだけど、かなり厳しい。「写真、邪魔!」みたいな意見が多かったし。個人的には、この作品って、作中にしばしばイラストが入るライトノベルレーベルの作品のイラストを写真に置き換えたものだと思っている。その意味で、写真があること自体はそれほど気にならなかった。ただ、いかんせん、頁数の4分の1以上が丸々写真(他に頁の半分が写真ということも多い)というのは多すぎる感じだし、イメージ写真ってあまり多すぎると帰ってイメージを阻害するな、というのを感じずにはいられなかった。その意味で、写真と物語のバランス。そういうものに工夫が必要かな? というのを思わずにはいられなかった。
ただ……分量の制約と書いたけど、カラー写真をコレだけ入れるとなると、長編の分量があるのではとんでもない値段になるので、そういう意味でも難しいのだろうな……
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